少年法第六条第三項により児童相談所長から事件送致を受けた家庭裁判所が、同法第一八条第二項により、少年の自由を制限し、またはその自由を奪うような強制的措置を指示してそお事件を児童相談所長に送致する旨の決定をした場合、これに対して抗告を申し立てることはできない。
少年法第一八条第二項により強制的措置を指示して事件を児童相談所長に送致した家庭裁判所の決定に対し抗告をすることができるか。
少年法6条3項,少年法18条2項,少年法32条
判旨
児童相談所長による強制的措置の申請に基づく家庭裁判所の決定は、少年法32条に規定する「保護処分の決定」には当たらず、同条以外に抗告を認める規定もないため、これに対する不服申立ては許されない。
問題の所在(論点)
児童福祉法27条の2に基づき家庭裁判所がなす強制的措置の許可を内容とする決定(少年法18条2項)が、少年法32条にいう「保護処分の決定」に当たり、不服申立てが認められるか。
規範
少年法32条が抗告を認める対象は、同法24条1項に規定される保護処分の決定に限定される。それ以外の家庭裁判所の決定については、同法に抗告を認める規定がない限り、不服申立てを許さない趣旨であると解するのが相当である。
重要事実
愛媛県中央児童相談所長は、少年を教護院(現在の児童自立支援施設)に入所させるにあたり、行動の自由を制限する強制的措置を必要としたため、児童福祉法及び少年法に基づき松山家庭裁判所へ送致した。これを受け、同裁判所は調査の結果、強制的措置を可能とする決定を下した。これに対し少年側が抗告を申し立て、原審(高松高裁)は抗告を適法とした上で棄却したため、さらに再抗告がなされた。
事件番号: 昭和60(し)3 / 裁判年月日: 昭和60年5月14日 / 結論: 棄却
少年法二三条二項による保護処分に付さない旨の決定に対しては、それが非行事実の認定を明示したものであつても、抗告をすることができない。
あてはめ
児童相談所長から家庭裁判所への送致は、強制的措置を講じるための許可を申請する趣旨のものであり、家庭裁判所のなした決定も、この申請に対する「許可」の性質を有するにすぎない。このような決定は、少年法24条1項が定める「保護処分の決定」そのものではないことは明らかである。また、少年法には保護処分以外の決定について抗告を認める規定が存在しないことから、本件決定に対する抗告は不適法といわざるを得ない。
結論
本件決定は保護処分の決定に当たらないため、少年法32条に基づく抗告は認められず、再抗告も不適法として棄却される。
実務上の射程
少年法上の不服申立ての対象が、24条1項の保護処分に限定されることを確認した判例である。行政上の措置(児童福祉法)に付随する司法の関与(許可決定)については、別途明文がない限り争えないという構成をとる。司法試験上は、少年法の救済手続の限定性を論じる際の基礎知識として重要である。
事件番号: 平成9(し)240 / 裁判年月日: 平成10年4月21日 / 結論: 棄却
少年が非行事実の存在を争っている保護事件において、家庭裁判所がその争点について少年法一六条に基づき捜査機関に援助協力を依頼して回答を得ながら、右回答の存在を附添人に了知させなかった措置は、妥当性を欠いたものであるが、右回答は附添人らがその内容を了知していた捜査書類を要約したものなどであって、証拠全体の中で重要な位置を占…
事件番号: 昭和32(す)223 / 裁判年月日: 昭和32年4月5日 / 結論: 棄却
論旨の主張する、原決定(少年を中等少年院に送致する旨の保護処分決定)の結果として、事実上、本件少年が所論主張の高等学校教育を受ける機会を失うというようなことは、教育基本法三条一項所定の事由によつて差別的待遇を受けることに該当するものではない。
事件番号: 昭和32(し)16 / 裁判年月日: 昭和32年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年院送致決定の審判手続に憲法違反があるとの主張であっても、その実質が単なる法令違反の主張に過ぎない場合には、再抗告の理由として認められない。 第1 事案の概要:家庭裁判所が少年に向けて少年院送致の決定を行い、これに対し抗告がなされた。抗告裁判所が原決定を是認したため、さらに最高裁判所に対して憲法…
事件番号: 平成1(し)121 / 裁判年月日: 平成2年10月24日 / 結論: 棄却
家庭裁判所は、事実調査のため、捜査機関に対し、補充捜査を促し、又は少年法一六条の規定に基づいて補充捜査を求めることができる。