論旨の主張する、原決定(少年を中等少年院に送致する旨の保護処分決定)の結果として、事実上、本件少年が所論主張の高等学校教育を受ける機会を失うというようなことは、教育基本法三条一項所定の事由によつて差別的待遇を受けることに該当するものではない。
少年を中等少年院に送致する旨の保護処分決定は教育基本法第三条第一項に違反するか
少年法24条1項,教育基本法3条1項,憲法26条1項
判旨
憲法26条1項は教育を受ける権利を法律の範囲内で保障するものであり、少年保護処分によって事実上教育の機会を喪失したとしても、人種や信条、身分等による差別的待遇に当たらない限り、同条及び教育基本法に違反しない。
問題の所在(論点)
少年に対する保護処分によって事実上高等学校教育を受ける機会が失われることが、憲法26条1項(教育を受ける権利)および教育基本法の差別禁止規定に違反するか。
規範
憲法26条1項は、国民の教育を受ける権利を無条件無制限に保障するものではなく、法律の規定する範囲内においてこれを保障するものである。教育基本法(当時)3条1項はこれを受け、教育を受ける機会は能力に応じて平等に与えられるべきであり、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって差別的待遇を受けないことを保障している。
重要事実
少年審判において少年に保護処分が下された。これに対し再抗告人は、当該保護処分によって少年が事実上、高等学校教育を受ける機会を失うことになるのは、憲法26条1項および教育基本法3条1項に違反する差別的待遇であると主張した。
事件番号: 昭和32(し)16 / 裁判年月日: 昭和32年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年院送致決定の審判手続に憲法違反があるとの主張であっても、その実質が単なる法令違反の主張に過ぎない場合には、再抗告の理由として認められない。 第1 事案の概要:家庭裁判所が少年に向けて少年院送致の決定を行い、これに対し抗告がなされた。抗告裁判所が原決定を是認したため、さらに最高裁判所に対して憲法…
あてはめ
教育基本法3条1項が禁じる差別的待遇とは、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地といった特定の属性を理由とするものを指す。本件において、保護処分の結果として少年が事実上教育機会を喪失したとしても、それは同条所定の事由に基づく差別的待遇には該当しない。したがって、教育を受ける機会を喪失したという事実は、教育基本法の保障内容とは無関係である。
結論
本件保護処分は憲法26条1項および教育基本法3条1項に違反しない。
実務上の射程
教育を受ける権利の性格が「法律の範囲内」であることを示した初期の判例である。少年法上の保護処分による身体拘束等が、憲法26条1項との関係で許容される論拠として引用し得るが、権利の公共的な制約面を重視する構成をとっている。
事件番号: 昭和58(し)30 / 裁判年月日: 昭和58年9月5日 / 結論: その他
一 少年法二七条の二第一項にいう「本人に対し審判権がなかつたこと・・・・を認め得る明らかな資料を新たに発見したとき」とは、少年の年齢超過等が事後的に明らかにされた場合のみならず、非行事実がなかつたことを認めうる明らかな資料を新たに発見した場合を含む。 二 少年法二七条の二第一項は、保護処分の決定の確定したのちに処分の基…
事件番号: 昭和43(し)5 / 裁判年月日: 昭和43年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法35条に基づく再抗告において、実質的に単なる法令違反を主張するものや、事案の異なる判例の引用による判例違反の主張は、適法な再抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:本件は、少年審判の決定に対し再抗告がなされた事案である。再抗告人は、第一点として憲法違反を主張し、第二点として判例違反を主張…
事件番号: 昭和54(し)107 / 裁判年月日: 昭和54年12月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保護処分の決定に対する抗告の申立書の記載方式や抗告期間の定めは、専ら立法政策の問題であり、これらを定める少年審判規則が憲法14条、31条、32条に違反することはない。 第1 事案の概要:少年による保護処分決定に対する抗告手続において、抗告人が少年審判規則43条2項(抗告の申立理由の記載等)等の規定…
事件番号: 昭和32(す)371 / 裁判年月日: 昭和32年6月12日 / 結論: 棄却
一 家庭裁判所において事件を受理する以前少年たる被疑者の弁護人として選任されていても、少年法第一〇条、少年審判規則第一四条によりあらためて附添人として選任されなければ、その弁護人をもつて当然に附添人であるということはできない。 二 少年を特別少年院に送致する旨の決定に対し抗告がなされた場合その少年が少年法にいう少年であ…