一 少年法二七条の二第一項にいう「本人に対し審判権がなかつたこと・・・・を認め得る明らかな資料を新たに発見したとき」とは、少年の年齢超過等が事後的に明らかにされた場合のみならず、非行事実がなかつたことを認めうる明らかな資料を新たに発見した場合を含む。 二 少年法二七条の二第一項は、保護処分の決定の確定したのちに処分の基礎とされた非行事実の不存在が明らかにされた少年を将来的に向かつて保護処分から解放する手続をも規定したものである。 三 少年法二七条の二第一項による保護処分の取消を求める申立に対してされたこれを取り消さない旨の決定に対しては、同法三二条の準用により少年側の抗告が許される。 四 少年の再抗告事件において、原決定に少年法三五条所定の事由が認められない場合でも同法三二条所定の事由があつてこれを取り消さなければ著しく正義に反すると認められるときは、最高裁判所は、職権により原決定を取り消すことができる。
一 少年法二七条の二第一項にいう「本人に対し審判権がなかつたこと・・・・を認め得る明らかな資料を新たに発見したとき」の意義 二 少年法二七条の二第一項の趣旨 三 少年法二七条の二第一項による保護処分の取消を求める申立に対してされたこれを取り消さない旨の決定に対する抗告の可否 四 少年の再抗告事件において再抗告事由以外の事由により原決定を職権で取り消すことの可否
少年法27条の2第1項,少年法32条,少年法35条,少年法36条,少年審判規則48条,少年審判規則53条2項,少年審判規則54条,少年審判規則55条,刑訴法411条
判旨
少年法27条の2第1項に基づく保護処分の不取消決定は、保護処分を継続する実質を有するため、同法32条の準用により少年側からの抗告が許される。
問題の所在(論点)
少年法27条の2第1項に基づく保護処分の不取消決定に対し、同法32条を準用して抗告を申し立てることが許されるか。
規範
1. 少年法27条の2第1項の「審判権がなかったこと……を認め得る明らかな資料」には、非行事実の不存在を認め得る資料も含まれる。 2. 保護処分の不取消決定は、少年に対する保護処分を今後も継続することを内容とするものであり、同法24条所定の保護処分の決定とその実質を異にしない。したがって、同法32条の準用により少年側の抗告が許される。
事件番号: 平成6(し)94 / 裁判年月日: 平成6年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法27条の2第1項に基づく保護処分の取消しは、保護処分が継続中である場合に限り許され、処分の終了後は、非行事実の不存在を理由とする取消しは認められない。 第1 事案の概要:本件において、抗告人は、保護処分の決定が確定した後にその処分の基礎とされた非行事実が存在しないことが明らかになったとして、…
重要事実
殺人の非行事実により初等少年院送致の保護処分を受けた少年につき、附添人が「非行事実は存在せず、審判権がなかったことを認めるべき新資料を発見した」として少年法27条の2第1項に基づき保護処分の取消しを申し立てた。家裁支部は非行事実がないとはいえないとして不取消決定を下した。これに対し少年側が抗告したところ、高裁は、不取消決定は同法32条の抗告対象である「保護処分の決定」にあたらず、抗告を是認する規定もないとして不適法却下したため、少年側が再抗告した。
あてはめ
保護処分は少年の身体の拘束等の不利益を伴うものである以上、非行事実の認定は慎重を期すべきであり、非行事実がないのに誤って処分に付された少年を救済する途が必要である。実務上、27条の2第1項は非行事実の不存在が判明した場合に将来に向かって少年を解放する手続として運用されており、この解釈は支持できる。本件の不取消決定は、処分を継続させる判断である点で24条の保護処分決定と実質的に同一である。少年審判規則55条が保護処分取消事件に少年保護事件の例によるとしている趣旨も踏まえれば、32条の準用による不服申立てを認めるべきである。
結論
不取消決定に対しては少年法32条の準用により抗告が許される。したがって、抗告を不適法とした原決定には法令違反がある。
実務上の射程
少年法上の救済手続に関する重要判例である。答案上は、不取消決定の性質を「処分の継続」と捉えて24条決定との実質的同一性を指摘し、適正手続の観点から32条の準用を認める論理を展開する際に用いる。また、再抗告審における職権破棄の法理(著しく正義に反する場合)の先例としても参照し得る。
事件番号: 平成2(し)141 / 裁判年月日: 平成3年5月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法27条の2第1項に基づく保護処分の取消しは、将来に向かって少年を保護処分から解放する手続であり、保護処分が継続中である場合に限り許される。 第1 事案の概要:少年らは保護処分を受けたが、その基礎となった非行事実が存在しないと主張して保護処分の取消しを求めた。しかし、抗告審の継続中に一部の申立…
事件番号: 昭和59(し)20 / 裁判年月日: 昭和60年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法27条の2第1項に基づく保護処分の取消しが認められるためには、確定審判の非行事実の認定を覆すに足りる、審判権がなかったことを認め得る明らかな資料が必要である。本件では、当初の自白の任意性・信用性が高く、後出の否認供述や新証拠(ナイフ)に不自然な点があることから、同要件を充たさないと判断された…
事件番号: 平成7(し)7 / 裁判年月日: 平成7年2月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法27条の2第1項に基づく保護処分の取消しは、保護処分が継続中である場合に限り許され、処分終了後には認められない。同規定は少年を将来に向かって保護処分から解放することを目的とするものであり、少年の名誉回復を目的とするものではない。 第1 事案の概要:本件は、既に保護処分が終了した元少年が、保護…
事件番号: 昭和59(し)34 / 裁判年月日: 昭和59年9月18日 / 結論: 棄却
少年法二七条の二第一項による保護処分の取消は、保護処分が現に継続中である場合に限り許される。