少年法二三条二項による保護処分に付さない旨の決定に対しては、それが非行事実の認定を明示したものであつても、抗告をすることができない。
少年法二三条二項の不処分決定に対する抗告の許否
少年法23条2項,少年法32条
判旨
少年法23条2項に基づく「保護処分に付さない」旨の決定に対しては、たとえ非行事実の認定を明示するものであっても、少年側から不服を申し立てることはできない。
問題の所在(論点)
保護処分を免れるという少年にとって有利な結論である「不処分決定」に対し、決定理由中で非行事実が認定された場合に、少年の側から抗告を提起することが認められるか(少年法32条、35条の抗告権の有無)。
規範
少年法23条2項による保護処分に付さない旨の決定(不処分決定)に対しては、たとえ非行事実の認定を明示したものであっても、抗告することは許されない。このような解釈は、憲法31条(適正手続)および憲法32条(裁判を受ける権利)に違反しない。
重要事実
少年保護事件において、家庭裁判所が少年に対し、少年法23条2項に基づき「保護処分に付さない」旨の決定(不処分決定)を下した。この決定において非行事実の存在が明示されたため、少年側がこれを不服として抗告した事案である。
事件番号: 平成9(し)240 / 裁判年月日: 平成10年4月21日 / 結論: 棄却
少年が非行事実の存在を争っている保護事件において、家庭裁判所がその争点について少年法一六条に基づき捜査機関に援助協力を依頼して回答を得ながら、右回答の存在を附添人に了知させなかった措置は、妥当性を欠いたものであるが、右回答は附添人らがその内容を了知していた捜査書類を要約したものなどであって、証拠全体の中で重要な位置を占…
あてはめ
少年法の抗告制度は、少年の法的利益が侵害された場合にその救済を図るものである。不処分決定は、その結論において少年に対する何らの義務も課さず、身体の拘束等も伴わないものであるため、決定の理由中で非行事実が認定されていたとしても、法的地位を害する処分とはいえない。したがって、少年側からの不服申立ては認められず、これを否定しても憲法が保障する適正な裁判を受ける権利を侵害するものではないと判断される。
結論
不処分決定に対する抗告は許されず、抗告を棄却した原審の判断は正当である。
実務上の射程
不処分決定(23条2項)だけでなく、審判を開始しない旨の決定(19条1項)等、保護処分を課さない終局決定一般について、少年側からの抗告権が否定される根拠として用いられる。実務上、理由中の非行認定による事実上の不利益(レッテル貼り等)は、抗告を認めるための「法律上の利益」には含まれないことを確認する際に応用できる。
事件番号: 昭和40(し)7 / 裁判年月日: 昭和40年6月21日 / 結論: 棄却
少年法第六条第三項により児童相談所長から事件送致を受けた家庭裁判所が、同法第一八条第二項により、少年の自由を制限し、またはその自由を奪うような強制的措置を指示してそお事件を児童相談所長に送致する旨の決定をした場合、これに対して抗告を申し立てることはできない。
事件番号: 昭和59(し)20 / 裁判年月日: 昭和60年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法27条の2第1項に基づく保護処分の取消しが認められるためには、確定審判の非行事実の認定を覆すに足りる、審判権がなかったことを認め得る明らかな資料が必要である。本件では、当初の自白の任意性・信用性が高く、後出の否認供述や新証拠(ナイフ)に不自然な点があることから、同要件を充たさないと判断された…
事件番号: 昭和58(し)30 / 裁判年月日: 昭和58年9月5日 / 結論: その他
一 少年法二七条の二第一項にいう「本人に対し審判権がなかつたこと・・・・を認め得る明らかな資料を新たに発見したとき」とは、少年の年齢超過等が事後的に明らかにされた場合のみならず、非行事実がなかつたことを認めうる明らかな資料を新たに発見した場合を含む。 二 少年法二七条の二第一項は、保護処分の決定の確定したのちに処分の基…
事件番号: 昭和55(し)42 / 裁判年月日: 昭和55年5月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年保護処分の決定およびその抗告棄却決定に対する再審申立ての可否は、憲法上の問題ではなく立法政策の問題であり、現行法上これを受理しないことは違憲ではない。 第1 事案の概要:少年保護処分(少年院送致等)の決定、およびそれに対する抗告を棄却した決定に対し、不服を申し立てる側が「再審申立て」を求めて抗…