臨時農地等管理令第七条の二及び第五条の各規定は取締規定であり、右各条所定の地方長官の許可は農地の賃貸借の有効要件ではない。
臨時農地等管理令第七条ノ二同第五条違反の賃貸借の効力
臨時農地等管理令5条,臨時農地等管理令7条ノ2
判旨
臨時農地等管理令7条の2及び5条(当時)の規定は取締規定であり、地方長官の許可は農地賃貸借の有効要件ではないため、許可を欠く賃貸借契約も私法上は有効である。
問題の所在(論点)
臨時農地等管理令(当時)に基づく地方長官の許可を得ずに締結された農地の賃貸借契約が、私法上有効か。同令の規定が「取締規定」か「効力規定」かが問題となる。
規範
強制法規には、公法上の制限を課すにとどまる「取締規定」と、これに反する私法上の行為の効力を否定する「効力規定」がある。法が一定の手続(許可等)を要求している場合であっても、当該規定の趣旨が公法的な管理・統制にあるにとどまる場合には、当該手続を欠く行為であっても私法上の効力は妨げられない。
重要事実
被上告人は、本件土地の占有権原として土地賃借権を主張した。これに対し上告人は、当該賃貸借契約の締結当時施行されていた臨時農地等管理令7条の2及び5条所定の地方長官の許可を得ていないため、当該契約は無効であると主張して争った。
事件番号: 昭和34(オ)759 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の濫用(民法1条3項)の成否は、原審が確定した事実に即して判断されるべきであり、権利行使が正当な範囲を逸脱していると認められない限り、その請求は容認される。 第1 事案の概要:本判決文からは具体的な事案の詳細は不明であるが、上告人が被上告人の請求に対し、民法1条に違反する権利の濫用であると主張…
あてはめ
臨時農地等管理令7条の2及び5条の規定は、農地の適正な管理を目的とする「取締規定」と解するのが相当である。したがって、同規定が定める地方長官の許可は、行政上の取締りのための要件であって、賃貸借契約という私法上の法律行為の有効性を左右する「有効要件」ではない。
結論
地方長官の許可を欠く本件賃貸借契約も私法上は有効であり、被上告人は当該賃借権を占有の正当権原として主張することができる。
実務上の射程
公法上の制限(許可・届出等)に違反した行為の私法上の効力が争点となる事案において、当該規定が「取締規定」にすぎないか「効力規定」にあたるかを区別する際のリーディングケースとして活用できる。答案上は、法の趣旨が行政的監督にあることを強調し、私法上の合意の効力までを否定する意図がないことを論証する際に引用する。
事件番号: 昭和32(オ)208 / 裁判年月日: 昭和35年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】臨時農地等管理令5条の定める地方長官の許可は、農地確保のための取締目的の規定であり、これに違反してなされた賃借権の設定行為であっても、私法上の効力まで無効になるものではない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間で、建物所有を目的とした農地の賃貸借契約が締結された。しかし、当該賃貸借について当…
事件番号: 昭和39(オ)24 / 裁判年月日: 昭和40年2月12日 / 結論: 棄却
土地賃貸人において、転借人に対し後日直接賃貸借契約をしてよい意向を示し、それまでの間は転借について暗黙の承諾をしたと見られるような態度をとり、転借人としては、賃貸人の指図に従い、同人の転貸人に対する賃貸借消滅による建物収去土地明渡請求訴訟に協力する態度をとり、賃貸人が勝訴すれば自ら賃借できると考え、同人から明渡を請求さ…
事件番号: 昭和31(オ)517 / 裁判年月日: 昭和35年4月1日 / 結論: 棄却
臨時農地等管理令第五条はいわゆる取締規定にすぎないから、同条所定の地方長官の許可がなくても、農地を耕作以外の目的に供するためその所有権を取得する契約は無効ではない。
事件番号: 昭和27(オ)1194 / 裁判年月日: 昭和29年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】防空法に基づく建物の強制疎開により土地を借り上げた行政庁は、防空の目的のためにのみ当該土地を使用できるのであり、所有者の承諾なく復興等の他目的で第三者に使用させる権利を有しない。 第1 事案の概要:戦時中、防空法に基づき建物の強制疎開が行われ、東京都が疎開跡地を借り上げた。終戦後、東京都は防空目的…