判旨
防空法に基づく建物の強制疎開により土地を借り上げた行政庁は、防空の目的のためにのみ当該土地を使用できるのであり、所有者の承諾なく復興等の他目的で第三者に使用させる権利を有しない。
問題の所在(論点)
防空法に基づく土地の強制借上によって得た権利の範囲が、当初の行政目的である「防空」に限定されるか、あるいは目的外の「土地復興」等のためにも第三者に使用させることができるか。
規範
特定の行政目的(防空法に基づく強制疎開)のために認められた土地の公用借上権は、その目的達成のために必要な範囲内に限定される。したがって、当該行政庁は、土地所有者の承諾がない限り、当初の目的(防空)以外の用途(土地復興等)のために第三者に当該土地を使用させる権限を有しない。
重要事実
戦時中、防空法に基づき建物の強制疎開が行われ、東京都が疎開跡地を借り上げた。終戦後、東京都は防空目的が消滅したにもかかわらず、土地所有者の承諾を得ることなく、付近一帯の土地復興を名目として、当該疎開跡地を第三者に使用させた。土地所有者がこの使用権限を争った事案である。
あてはめ
本件における東京都の権利は、防空法に基づく強制疎開という専ら防空の必要性のために生じたものである。そうであれば、借上者たる東京都は、防空という行政目的に適合する範囲内でのみ土地を使用し得ると解すべきである。本件のように、防空目的以外の「附近一帯の土地の復興」のために、所有者の承諾なく第三者に土地を使用させることは、法令上の根拠を欠く権限外の行為であるといえる。
結論
東京都は防空目的以外に土地を使用させる権利を有しない。したがって、土地所有者の承諾なく第三者に使用させたことは違法である。
実務上の射程
事件番号: 昭和39(オ)754 / 裁判年月日: 昭和41年5月17日 / 結論: 棄却
臨時農地等管理令第七条の二及び第五条の各規定は取締規定であり、右各条所定の地方長官の許可は農地の賃貸借の有効要件ではない。
行政上の強制手段により取得した権利の目的拘束性を認めた事例である。公権力の行使に基づく権利取得であっても、その根拠法の目的外転用は許されないという法理を示しており、行政法における公用収用の目的拘束性や、私法上の賃貸借における無断転貸・目的外使用の類推適用場面で参照し得る。
事件番号: 昭和31(オ)664 / 裁判年月日: 昭和33年1月23日 / 結論: 棄却
借地上の建物が滅失し借地権者が新たに非堅固建物を築造するにあたり、存続期間満了の際における借地の返還を確保する目的をもつて、残存期間を超えて存続する建物を築造しない旨借地権者をして特約させた場合、右特約は借地法第一一条により無効である。
事件番号: 昭和34(オ)768 / 裁判年月日: 昭和37年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地賃貸借契約において建物の種類や構造を制限する特約がある場合、賃借人がこれに違反して建物を建築したときは、当該特約違反を理由とする賃貸借契約の解除が有効に認められる。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)との間で土地賃貸借契約を締結した際、建物の種類や構造を制限する旨の特約(…
事件番号: 昭和39(オ)24 / 裁判年月日: 昭和40年2月12日 / 結論: 棄却
土地賃貸人において、転借人に対し後日直接賃貸借契約をしてよい意向を示し、それまでの間は転借について暗黙の承諾をしたと見られるような態度をとり、転借人としては、賃貸人の指図に従い、同人の転貸人に対する賃貸借消滅による建物収去土地明渡請求訴訟に協力する態度をとり、賃貸人が勝訴すれば自ら賃借できると考え、同人から明渡を請求さ…
事件番号: 昭和33(オ)874 / 裁判年月日: 昭和36年8月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法(旧借地法)の適用を排除する「一時使用のための賃貸借」に該当するか否かは、契約の目的、賃貸借の期間、建物の種類、その他諸般の事情を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間で本件宅地の賃貸借契約が締結された。原審は、当該契約がなされた背景、建物の利用目的、およ…