供託賃料を受領しても、必ずしも賃貸借の更新があるとは限らない。
供託賃料の受領と賃貸借の更新。
借家法2条2項
判旨
賃貸借契約終了後に借主が供託した金員を貸主が受領しても、それが賃料相当損害金として受領されたものである場合には、貸主が使用継続について異議を述べなかったとはいえず、法定更新の成立は認められない。
問題の所在(論点)
賃借人が供託した金員を賃貸人側が受領した場合、それが「賃料相当の損害金」としての受領であれば、借家法(旧法)上の法定更新を基礎付ける「異議がなかったこと」に該当するか。
規範
賃貸借契約の期間満了後、借主が賃借物の使用を継続する場合において、貸主が「遅滞なく異議」を述べたか否かは、貸主の言動から使用継続を黙認する意思があるといえるかによって判断される。貸主側が提供された金員を受領した場合であっても、それが「賃料相当の損害金」として受領されたものであれば、使用継続を容認したものとはいえず、法定更新(旧借家法2条2項、3条、民法619条1項参照)の成立は妨げられる。
重要事実
上告人(借主)は、賃貸借契約終了後も本件家屋の継続使用を主張し、6万3000円を弁済供託した。被上告人(貸主)の代理人であるDおよびEは、当該供託金を受領したが、その際、当該金員を賃料ではなく「賃料相当の損害金」として受領する趣旨であることを明確にしていた。上告人は、この金員受領をもって使用継続に対する異議がなかったものと主張し、法定更新の成立を争った。
あてはめ
本件において、被上告人の代理人は上告人が供託した金員を受領しているが、その実態は「賃料相当の損害金」として受領されたものである。この場合、貸主はあくまで契約が終了したことを前提として不法占有に伴う損害の賠償を受けているに過ぎず、賃貸借関係の継続を認める意思(黙認の意思)は認められない。したがって、貸主が使用継続につき異議を述べなかったと評価することはできず、法定更新の要件を欠くといえる。
結論
被上告人による供託金の受領は賃料相当損害金としての受領であるため、法定更新は認められず、上告人の主張は採用できない。
実務上の射程
契約終了後の金銭受領が直ちに法定更新を基礎付ける「黙示の承諾」や「異議の欠如」を意味しないことを示す射程を持つ。答案上は、賃料提供と異議の有無が争点となる場面で、受領の際の名目や趣旨(損害金名目か否か)を重視して異議の有無を認定する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)1302 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
賃貸借終了に基づく明渡義務不履行による賃料相当の損害金算定にあたり、地代家賃統制令に従うべき基礎たる事実の主張、立証がないときは、約定賃料を基準としてこれを算定しても違法でない。