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建物賃貸借契約の際賃借人より賃貸人に支払われた三〇万円が権利金ではなく三年間の資料の一部前払いと認められた事例。
判旨
賃貸借契約の締結に際して支払われた金員が、賃借権設定の対価としての権利金ではなく、将来の賃料の一部前払いとしての性質を有する場合、その法的性質は契約上の合意内容や証拠関係に基づき判断される。
問題の所在(論点)
賃貸借契約締結の際に支払われた金員が、権利金(賃借権設定の対価)にあたるのか、あるいは賃料の一部前払いとしての性質を有するのか、その法的性質の認定が問題となった。
規範
賃貸借契約締結時に授受される金員の法的性質(権利金か賃料の前払いか)については、当事者の意思表示の解釈、授受の目的、金額、契約期間等の諸般の事情を総合して判断すべきである。
重要事実
上告人(賃借人)は、被上告人(賃借人)との間で建物賃貸借契約を締結する際、30万円を支払った。この30万円について、上告人は建物の営業上の利益ないし賃借権設定の対価(権利金)であると主張したが、原審はこれを3年間の賃料の一部前払いの趣旨であると認定した。上告人はこの認定を不服として上告した。
あてはめ
原審が挙げた証拠関係によれば、本件の30万円は、1回限りの営業的利益の対価として支払われたものではなく、将来の一定期間(3年間)にわたる賃料をあらかじめ支払ったものと解するのが相当である。上告人の主張は、原審の証拠の取捨選択や事実認定を非難するにすぎず、原判決の判断は是認できる。
結論
本件金員は賃料の一部前払いであると認められる。したがって、原審の判断に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
建物の賃貸借において授受される金員の性質決定に関する事例判断である。実務上、権利金であれば返還不要な対価となり得る一方、賃料の前払いであれば中途解約時に未経過期間分の返還問題が生じ得るため、その区別を契約実態から判断する際の参考となる。
事件番号: 昭和37(オ)907 / 裁判年月日: 昭和38年3月1日 / 結論: 棄却
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