建物明渡義務不履行による損害金の請求を受ける被告側で当該建物に対する地代家賃統制令適用の基礎たる事実関係を主張立証しない以上、右損害金算定の基礎として相当賃料を認定するにあたり同令の適用を顧慮しなかつたとしても違法といえない。
建物明渡義務不履行による損害金と地代家賃統制令。
地代家賃統制令,民訴法第1編第3章第1節
判旨
賃貸借契約終了後に賃借人が供託した賃料相当額を賃列人が受領した場合であっても、それが損害金として受領されたものであり、供託の効力(弁済による契約存続等)を認める趣旨でないときは、受領によって契約終了の効果が妨げられることはない。
問題の所在(論点)
賃貸借契約終了後に、賃借人が賃料として供託した金員を賃列人が受領した場合、それが供託の効力(債務消滅や契約存続の抗弁)を承認したものとみなされるか。また、主要事実ではない事実(来歴経過)についての弁論主義違反の成否が問題となった。
規範
賃貸借契約終了後、賃借人が賃料名目で供託した金員を賃列人が受領した場合、その受領が「家賃相当損害金」としての趣旨であり、かつ供託の弁済としての効力を承認する意思がないと認められるときは、民法498条等の供託の効力を認めるべきではない。
重要事実
上告人と被上告人の間の建物賃貸借契約は、昭和34年10月25日をもって終了した。上告人は、契約終了後も賃料相当額を供託し続けていたが、被上告人はこれを受領した。上告人は、被上告人が供託金を受領した以上、供託の効力を認めたものであり、賃貸借契約の継続や損害賠償義務の消滅を主張して争った。
あてはめ
本件において、被上告人が賃貸借終了後の期間に対する供託金を受領したのは、あくまで家賃相当の損害金として受領したものである。被上告人は供託の本来の効力(賃料支払としての弁済)を認めたものではないと認定される。また、原審が認定した「被上告人が生活に困っていた」事実は、主要事実に対する単なる来歴経過にすぎないため、当事者の主張がないとしても弁論主義に違反しない。したがって、供託金の受領をもって、契約終了の効果が否定されることはない。
結論
賃貸借契約終了後の供託金の受領が損害金としての趣旨である以上、供託の効力を認めたものとはいえず、契約終了に基づく建物明渡し及び損害金支払義務に影響しない。上告棄却。
実務上の射程
契約終了後の供託金受領が「追認」や「契約更新」とみなされるリスクを回避するための判断枠組みとして機能する。実務上は受領時に「損害金として受領する」旨の留保を付すことが一般的だが、本判決はその趣旨を認定事実から柔軟に判断している。また、弁論主義の対象を主要事実に限定する実務上の原則を再確認する際にも引用される。
事件番号: 昭和38(オ)1302 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
賃貸借終了に基づく明渡義務不履行による賃料相当の損害金算定にあたり、地代家賃統制令に従うべき基礎たる事実の主張、立証がないときは、約定賃料を基準としてこれを算定しても違法でない。
事件番号: 昭和38(オ)392 / 裁判年月日: 昭和39年8月20日 / 結論: 棄却
賃貸借終了後の損害金としての金員請求は、「賃貸借が原告主張の時点より後に終了したとすれば、その時までは賃料として請求する」との趣意を含むと解するのが一般であるが、本件における事情(当審判決理由参照)のもとにおいては、賃料請求としての趣意を含むものと解するのは相当でない。