賃貸借終了に基づく明渡義務不履行による賃料相当の損害金算定にあたり、地代家賃統制令に従うべき基礎たる事実の主張、立証がないときは、約定賃料を基準としてこれを算定しても違法でない。
建物の明渡義務不履行による損害金と地代家賃統制令。
地代家賃統制令,民訴法191条,民訴法第2編第3章
判旨
賃貸借の解約申入れ後に賃貸人が損害金名目で供託金を受領しても、解約申入れを撤回・放棄する意思がないことが明白であれば、解約の効果は妨げられない。
問題の所在(論点)
賃貸人が解約申入れ後に賃料相当額の供託金を受領した場合に、借地借家法(旧借家法)上の解約申入れの撤回または放棄があったとみなされるか。
規範
賃貸借契約の解約申入れ後に、賃貸人が賃借人から支払われた金員を受領したとしても、それが明渡義務不履行による損害金としての趣旨でなされ、かつ賃貸人に解約申入れを撤回または放棄する意思が認められない場合には、解約申入れの効力は失われない。
重要事実
賃貸人(被上告人)は賃借人(上告人)に対し、建物の賃貸借契約について解約の申入れを行った。当該申入れにより、契約は昭和34年6月30日をもって終了したと認定されたが、賃借人は建物を明け渡さなかった。その後、賃借人が供託した12万5000円を、賃貸人は「明渡義務不履行による損害金」の趣旨で受領した。賃借人は、この受領をもって解約申入れの撤回または放棄があったと主張して争った。
あてはめ
本件において、賃貸人は受領した12万5000円を、契約継続を前提とした賃料ではなく、明渡義務不履行に基づく「損害金」の趣旨で還付を受けている。また、諸般の事情に照らせば、賃貸人には解約申入れを撤回あるいは放棄する意思が全くなかったと認められる。したがって、金員の受領という事実のみをもって解約の効果が否定されることはない。さらに、解約の正当事由についても、双方の諸事情を総合考慮した原審の判断は正当である。
結論
解約申入れの効力は維持され、賃貸借契約は終了しているため、上告人の主張は排斥される(上告棄却)。
実務上の射程
賃貸借終了後の賃料相当額の受領が「黙示の更新」や「解約の撤回」とみなされるリスクを回避する基準を示す。実務上は、受領時に「損害金名目」であることを明示し、契約終了の意思を明確に保持していることが重要となる。
事件番号: 昭和36(オ)323 / 裁判年月日: 昭和39年4月10日 / 結論: 棄却
賃貸人が賃貸借契約解除の意思表示をなした後に、右解除の効力を争う賃借人が右解除の日以降の賃料として供託した金員を受領した場合であつても、右受領により賃貸借の解除の効果を消滅せしめ、もしくはそのときに新たな賃貸借契約を締結したものと認めるべき特別の事情でもあれば格別、却つて右供託金受領の前後を通じて賃貸借契約が解除された…