判旨
賃貸借契約において賃料不履行に基づく解除が適法になされた後に行われた弁済の提供や供託は、解除の効力を左右するものではなく不適法である。
問題の所在(論点)
賃料不履行に基づく解除の意思表示が到達した後に、賃借人が賃料の提供や供託を行った場合、当該解除の効力が否定されるか。
規範
賃貸借契約において、賃借人の債務不履行を理由とする解除権が適法に行使された場合、その時点で契約は終了する。したがって、解除権行使後になされた賃料の提供または供託は、既に発生した解除の効果を消滅させるものではなく、履行の提供として不適法である。
重要事実
上告人(賃借人)は、本件家屋(店舗用)の賃料支払を怠った。これに対し、被上告人(賃貸人)は昭和27年9月1日に賃料不履行を理由として賃貸借契約を解除する意思表示を行った。上告人は、当該解除の意思表示がなされた後に、未払賃料の提供および供託を行った。
あてはめ
本件では、昭和27年9月1日の時点で賃料不履行を理由とする解除が適法に成立している。解除によって契約関係は既に終了しているため、その後の賃料提供や供託は時期に後れた不適法なものといわざるを得ない。また、賃料減額請求についても、借家法上の事情変更を認める証拠がなく排斥されるべきである。
結論
本件賃貸借契約は解除により適法に終了しており、その後の賃料提供等は解除の効力に影響しない。したがって、上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
契約解除の効力発生時期と、その後の事後的な履行提供の法的性質を整理する際に活用できる。債務不履行解除において、催告期間経過後や解除意思表示到達後の「追完」が認められないことを示す簡潔な根拠となる。
事件番号: 昭和32(オ)860 / 裁判年月日: 昭和34年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃料の延滞を理由とする賃貸借契約の解除が認められる場合において、供託が有効であると認められない事実関係の下では、解除は信義則違反や権利濫用には当たらない。 第1 事案の概要:賃借人(上告人)は、賃料の支払いに代えて供託を行ったが、原審においてその供託は無効であると判断された。賃貸人(被上告人)は、…