昭和三三年一二月一六日の抵当権設定契約を原因とする登記の記載が昭和三三年一〇月一五日付抵当権設定契約に因るものとされていても、右の程度の相違は登記の無効をきたさない。
現実の契約日時と相違する日時で登記原因の記載がなされている登記の効力。
不動産登記法117条
判旨
登記原因の合意の日時等に事実と異なる記載があっても、登記の基礎となる設定合意や登記申請の意思が存在し、それが実体関係に合致するものである限り、その登記を無効とすべきではない。
問題の所在(論点)
登記原因として記載された契約の日付や原因が、実際の契約締結の経緯と相違している場合、その登記は有効か。実体関係に符合する登記の有効性が問われた。
規範
不動産登記の目的は実体的な権利関係を公示することにある。したがって、登記原因として記載された日付や契約の内容が真実の過程と厳密に一致しなくても、当事者間に当該権利を発生させる合意が存在し、かつ現在の実体的な権利関係を反映している場合には、その程度の相違は登記を直ちに無効とする理由にはならない。
重要事実
不動産所有者である上告人は、被上告人らとの話し合いに基づき、昭和33年12月16日に抵当権設定契約を締結した。上告人は登記の承諾を与え、委任状や印鑑証明書を被上告人の代理人に交付し、これに基づいて同月19日に登記が完了した。しかし、登記簿上の原因記載は「昭和33年10月15日金銭消費貸借、同日付抵当権設定」とされており、実際の日付や契約成立の経緯と相違が生じていた。
事件番号: 昭和25(オ)377 / 裁判年月日: 昭和27年12月4日 / 結論: 棄却
四月一三日に成立した消費貸借上の債務につき、同月三〇日になされた抵当権設定登記において、右消費貸借成立の日が三月三一日と表示されていても、同一の消費貸借を表示するものである以上、右登記は有効である。
あてはめ
本件では、上告人と被上告人らの四者間での話し合いに基づき、昭和33年12月16日に抵当権設定契約が成立している。上告人は登記に必要な書類を自ら作成して交付しており、抵当権を設定する確定的な意思があったといえる。登記上の日付(10月15日)と実際の合意日(12月16日)には相違があるものの、抵当権が設定されているという現在の実体関係自体には合致している。このような程度の相違は、不動産登記法の趣旨に照らして許容範囲内であり、登記の効力を否定すべき重大な瑕疵とは評価されない。
結論
本件抵当権設定登記は有効であり、上告人の登記無効の主張は認められない。
実務上の射程
実体関係に合致する登記の法理。登記原因や日付が事実と異なっていても、物権変動という結論において実体法上の権利関係と一致している限り、その登記を有効とする実務上の準則を確認したものである。答案上は、登記の有効性が争われる場面で、実体関係との適合性を根拠に有効性を肯定する際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和30(オ)632 / 裁判年月日: 昭和33年5月9日 / 結論: 棄却
被担保債権である現存の債権および将来成立すべき条件付債権を、現存の貸金債権と表示してなされた抵当権設定登記であつても、当事者が真実その設定した抵当権を登記する意思で登記手続を終えた以上、これを当然に無効のものと解すべきではない
事件番号: 昭和39(オ)77 / 裁判年月日: 昭和41年11月18日 / 結論: 棄却
一 登記申請行為自体には、表見代理に関する民法の規定の適用はない。 二 偽造文書によつて登記がされた場合でも、その登記の記載が実体的法律関係に符合し、かつ、登記義務者において登記申請を拒むことができる特段の事情がなく、登記権利者において当該登記申請が適法であると信ずるにつき正当の事由があるときは、登記義務者は右登記の無…
事件番号: 昭和34(オ)321 / 裁判年月日: 昭和37年3月15日 / 結論: その他
貸金債務担保のために債務者所有の不動産に抵当権設定登記がなされた後、債務者においていつたん右債務の元利金を弁済し、さらに翌日同一債権者より同一金額を、弁済期の点以外はすべて旧債務と同一の条件で借り受け、これが担保として同一不動産につき抵当権を設定し、当事者間の合意によつて、旧債務についてなされてあつた前記抵当権設定登記…