四月一三日に成立した消費貸借上の債務につき、同月三〇日になされた抵当権設定登記において、右消費貸借成立の日が三月三一日と表示されていても、同一の消費貸借を表示するものである以上、右登記は有効である。
被担保債権成立後その成立の日を遡及してなされた抵当権設定登記の効力
不動産登記法117条
判旨
抵当権設定登記に記載された被担保債権の成立年月日が実際と異なる場合であっても、登記上の債権と実際の債権との間に同一性が認められる限り、当該登記は有効である。
問題の所在(論点)
抵当権設定登記に記載された原因日付と実際の債権成立日が異なる場合、当該登記は無効となるか。登記上の債権と実体上の債権の「同一性」が問題となる。
規範
不動産登記の有効性は、登記が実体上の権利関係を公示するに足りるか否かによって判断される。被担保債権の成立原因である消費貸借の成立日等の表示に齟齬がある場合であっても、それが同一の債権を指すものと認められ、かつ、登記がなされた時点で被担保債権が既に実体として成立しているならば、当該登記は形式的・実質的にも有効である。
重要事実
被上告人は、昭和23年3月31日にDから金銭貸借の依頼を受け、同日付の借用証書を作成した。実際の金銭交付(消費貸借の成立)は同年4月13日であったが、同月30日にされた抵当権設定登記には、登記原因として「昭和23年3月31日附の消費貸借による債務」と記載された。第三者である上告人は、登記上の日付には債権が存在しないとして、抵当権の無効を主張した。
事件番号: 昭和39(オ)321 / 裁判年月日: 昭和40年2月19日 / 結論: 棄却
昭和三三年一二月一六日の抵当権設定契約を原因とする登記の記載が昭和三三年一〇月一五日付抵当権設定契約に因るものとされていても、右の程度の相違は登記の無効をきたさない。
あてはめ
本件では、登記に表示された「昭和23年3月31日」という日付は、当初の借用証書作成日に基づくものである。実際には同年4月13日に金銭が交付されて消費貸借が成立しているが、この実体上の債権は登記上の債権と同一性を欠くものではないと認められる。また、登記が実行された同月30日時点では、既に被担保債権が実体として有効に成立している。したがって、日付の齟齬は登記の効力を妨げるものではなく、第三者に対する関係においても債権の存在を否定すべきではない。
結論
被担保債権の同一性が認められる限り、登記原因の日付に多少の誤りがあっても抵当権設定登記は有効であり、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
登記の「実体関係との合致」の程度を緩和する判例である。答案上では、不動産登記の流用や無効な登記の転用など、登記の有効性を論じる際の一般原則として「同一性」の観点を導き出すために活用できる。債権の特定がなされており、かつ公示としての機能を果たし得る範囲の誤差であれば有効性を肯定する論拠となる。
事件番号: 昭和44(オ)277 / 裁判年月日: 昭和44年7月25日 / 結論: 棄却
当事者間において将来金銭その他の物を給付する債務を生ずることがあるべき場合、これを準消費貸借の目的とすることを約し得るのであつて、その後該債務が生じたとき、その準消費貸借は当然にその効力を生ずる(昭和四〇年(オ)第二〇〇号、同四〇年一〇月七日第一小法廷判決、民集一九巻七号一七二三頁参照)。
事件番号: 昭和35(オ)607 / 裁判年月日: 昭和37年6月12日 / 結論: 棄却
抵当権設定契約に基づく抵当権設定登記手続請求事件において、原告は抵当権の被担保債権は、抵当権設定の日に被告に貸し付けた貸付金債権であると主張したのに対し、裁判所が右被担保債権は右設定の日より三、四箇月前に訴外人と被告との間に成立した、金銭消費貸借契約につき、右設定の日に債権者を原告とする更改契約がなされたうえ、原告と被…
事件番号: 昭和30(オ)632 / 裁判年月日: 昭和33年5月9日 / 結論: 棄却
被担保債権である現存の債権および将来成立すべき条件付債権を、現存の貸金債権と表示してなされた抵当権設定登記であつても、当事者が真実その設定した抵当権を登記する意思で登記手続を終えた以上、これを当然に無効のものと解すべきではない