当事者間において将来金銭その他の物を給付する債務を生ずることがあるべき場合、これを準消費貸借の目的とすることを約し得るのであつて、その後該債務が生じたとき、その準消費貸借は当然にその効力を生ずる(昭和四〇年(オ)第二〇〇号、同四〇年一〇月七日第一小法廷判決、民集一九巻七号一七二三頁参照)。
将来発生する金銭債務を基礎とする準消費貸借
民法588条
判旨
将来発生すべき債務を目的とする準消費貸借契約の予約(事前の合意)は有効であり、当該債務が実際に発生した時点で準消費貸借としての効力が当然に生じる。
問題の所在(論点)
民法588条にいう「金銭その他の物を給付する義務がある場合」として、合意時点で現に存在する債務に限られるか。将来発生すべき債務を準消費貸借の目的とする契約の成否および効力発生時期が問題となる。
規範
当事者間において将来金銭その他の物を給付する債務を生ずることがあるべき場合、これを準消費貸借(民法588条)の目的とすることをあらかじめ約することができる。この場合、その後実際に当該債務が生じたとき、その準消費貸借は特段の意思表示を要せず当然にその効力を生ずる。
重要事実
上告人と被上告人の間で、将来発生する可能性のある金銭債務について、これを準消費貸借の目的とする合意がなされた。その後、実際に目的とされた債務が発生した。上告人は、債務発生前の合意に基づく準消費貸借の効力を否定して争った。
事件番号: 昭和25(オ)377 / 裁判年月日: 昭和27年12月4日 / 結論: 棄却
四月一三日に成立した消費貸借上の債務につき、同月三〇日になされた抵当権設定登記において、右消費貸借成立の日が三月三一日と表示されていても、同一の消費貸借を表示するものである以上、右登記は有効である。
あてはめ
本件では、将来の債務発生を前提とした準消費貸借の予約的合意がなされている。判例の趣旨に照らせば、契約締結時に債務が現実化していなくとも、将来の発生が予定されているものであれば準消費貸借の目的とすることが可能である。そして、目的とされていた具体的な債務が後日現実に発生したことにより、先行する合意と相まって準消費貸借としての法的効力が確定的に発生したものと評価される。
結論
将来発生すべき債務を目的とする準消費貸借の合意は有効であり、当該債務の発生と同時に準消費貸借が成立する。
実務上の射程
準消費貸借の成立要件である「既存債務の存在」の判断時期を緩和し、予約的な合意を認める射程を持つ。実務上は、継続的取引における債務の清算をあらかじめ簡便化する手法として有用であり、答案上は既存債務が合意時に未発生であっても、発生時に遡って、あるいは発生と同時に準消費貸借の成立を肯定する根拠として用いる。
事件番号: 昭和42(オ)373 / 裁判年月日: 昭和43年9月27日 / 結論: 棄却
甲乙間の織物および織物加工品の商取引ならびに手形取引契約に基づいて生ずる債権ならびに乙丙間の織物の取引に関し生じたもので甲において丙からその譲受が予想される債権をも担保することを目的として、甲乙間でされた根抵当権設定契約は、有効である。
事件番号: 昭和44(オ)1012 / 裁判年月日: 昭和45年2月24日 / 結論: 棄却
甲は、乙が代表者である丙組合と丁会社との紛争解決などのために、戊に合計九〇万円を融資し、その債務担保のため本件土地につき、戊から譲渡担保の設定を受け、一方、乙は、右のような事情から右担保権を取得した甲のために、その権利行使の障害となる根抵当権を自ら放棄したものであるなど判示事実関係のもとにおいては、乙は、その後戊との間…
事件番号: 昭和44(オ)491 / 裁判年月日: 昭和44年11月27日 / 結論: 棄却
債務者兼抵当権設定者が債務の不存在を理由として提起した抵当権設定登記抹消登記手続請求訴訟において、債権者兼抵当権者が請求棄却の判決を求め被担保債権の存在を主張したときは、右主張は、裁判上の請求に準ずるものとして、被担保債権につき消滅時効中断の効力を生ずる。
事件番号: 昭和33(オ)767 / 裁判年月日: 昭和35年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記手続において、代理人が本人及び相手方の双方を代理する場合であっても、それが既に成立している法律関係に基づく登記義務の履行であるときは、民法108条本文の禁止する双方代理には当たらない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の間の不動産取引に関連し、特定の書面(丙第2号証)が上告人の意思に基…