甲乙間の織物および織物加工品の商取引ならびに手形取引契約に基づいて生ずる債権ならびに乙丙間の織物の取引に関し生じたもので甲において丙からその譲受が予想される債権をも担保することを目的として、甲乙間でされた根抵当権設定契約は、有効である。
一定の取引等に関連してされた根抵当権設定契約が有効とされた事例
民法369条
判旨
根抵当権の被担保債権の範囲に、債権者が将来第三者から譲り受けることが予想される債務者に対する債権を含める合意は、債権の範囲が当事者間において認識できる限度で有効である。
問題の所在(論点)
根抵当権の設定において、将来特定の第三者から譲り受けることが予想される債権を被担保債権の範囲に含める合意が、債権の範囲の特定性(民法398条の2第2項参照)の観点から有効か。
規範
根抵当権の被担保債権となるべき債権の範囲を定めるにあたり、特定の継続的取引契約に基づく債権のみならず、将来特定の第三者から債権を譲り受けることを予想し、当該譲受債権を担保の対象に含める合意も、その対象となる債権の範囲を当事者間において認識することができるものである限り、公序良俗等に反せず有効と解される。
重要事実
上告人と被上告人は、上告人が被上告人に対して現在および将来負担する債権を担保するため根抵当権設定契約を締結した。この際、被上告人が直接有する債権(織物・加工品の商取引や手形取引に基づく債権)に加え、上告人が他の織物業者(債権者)との取引によって負担している債権を、将来被上告人がそれら業者から譲り受けることを予定し、当該譲受債権も担保範囲に含める旨の合意がなされた。上告人は、このような譲受債権を担保対象とする合意は無効であると主張した。
事件番号: 昭和44(オ)277 / 裁判年月日: 昭和44年7月25日 / 結論: 棄却
当事者間において将来金銭その他の物を給付する債務を生ずることがあるべき場合、これを準消費貸借の目的とすることを約し得るのであつて、その後該債務が生じたとき、その準消費貸借は当然にその効力を生ずる(昭和四〇年(オ)第二〇〇号、同四〇年一〇月七日第一小法廷判決、民集一九巻七号一七二三頁参照)。
あてはめ
本件における被担保債権の範囲は、①上告・被上告人間における織物や加工品の商取引、手形取引から生ずる債権、および②上告人の他の織物業者との取引に関し生じ、かつ被上告人が譲り受けることが予想される債権とされている。これらは、上告人が営む織物取引という特定の事業活動に関連して発生するものであり、将来どのような債権が担保対象となるかを設定当事者間において明確に認識することが可能である。したがって、債権の特定を欠くものとはいえず、契約の効力を否定すべき理由はない。
結論
将来譲り受けることが予想される債権を被担保債権に含める根抵当権設定契約は有効である。したがって、本件根抵当権の効力は当該譲受債権にも及ぶ。
実務上の射程
本判決は、根抵当権の「債権の範囲」における特定性の程度を示したものである。答案上では、銀行が他行から債権を買い取る場合や、グループ企業間での債権回収を一本化する場合の担保設定の有効性を論じる際の根拠として活用できる。ただし、包括根抵当の禁止との兼ね合いから、あくまで「当事者が範囲を認識できる」程度の個別的・具体的限定が必要である点に留意すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)412 / 裁判年月日: 昭和39年8月13日 / 結論: 棄却
不動産所有権を取得したが本登記手続を経ない仮登記権利者は、右不動産上の抵当権者に対し被担保債務が弁済されたことを理由に当該抵当権設定登記の抹消登記手続を請求し得ない。
事件番号: 昭和42(オ)353 / 裁判年月日: 昭和44年1月16日 / 結論: 破棄差戻
一、抵当権の放棄は、その当時の目的物の所有者に対する意思表示によつて、その効力を生ずる。 二、根抵当権設定者である会社の代表者甲が、目的物の譲受人乙を代理して根抵当権者丙の根抵当権放棄の意思表示を受領した場合において、その被担保債権の債務者である協同組合の代表者丁が、甲とともに丙との交渉にあたり、その際右意思表示がされ…
事件番号: 昭和44(オ)1012 / 裁判年月日: 昭和45年2月24日 / 結論: 棄却
甲は、乙が代表者である丙組合と丁会社との紛争解決などのために、戊に合計九〇万円を融資し、その債務担保のため本件土地につき、戊から譲渡担保の設定を受け、一方、乙は、右のような事情から右担保権を取得した甲のために、その権利行使の障害となる根抵当権を自ら放棄したものであるなど判示事実関係のもとにおいては、乙は、その後戊との間…
事件番号: 昭和27(オ)1116 / 裁判年月日: 昭和28年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】基本債権が消滅時効の完成により消滅した場合、これを目的として締結された停止条件付代物弁済契約は失効し、その後に代物弁済の選択権を行使することはできない。 第1 事案の概要:債権者と債務者の間で、基本債権について停止条件付代物弁済契約が締結されていた。しかし、基本債権について昭和20年5月25日以降…