債務者兼抵当権設定者が債務の不存在を理由として提起した抵当権設定登記抹消登記手続請求訴訟において、債権者兼抵当権者が請求棄却の判決を求め被担保債権の存在を主張したときは、右主張は、裁判上の請求に準ずるものとして、被担保債権につき消滅時効中断の効力を生ずる。
抵当権設定登記抹消登記手続請求訴訟の応訴と被担保債権の消滅時効の中断
民法147条,民法149条
判旨
債務者が提起した抵当権設定登記等の抹消登記請求訴訟において、被告である債権者が答弁書等で請求棄却を求め、自己の債権の存在を主張する行為は、裁判上の請求に準ずるものとして消滅時効の中断効を生じる。
問題の所在(論点)
債務者が提起した登記抹消請求訴訟において、債権者が被告として応訴し、答弁書等で自己の債権の存在を主張することは、当該債権の消滅時効を中断させる「裁判上の請求」に当たるか。
規範
消滅時効の中断事由である「裁判上の請求」は、原則として権利者が原告となって訴えを提起することを指すが、債務者が提起した訴訟において債権者が受動的に応訴し、その中で自己の権利を主張する場合であっても、権利行使の意思が明確であれば「裁判上の請求」に準ずるものとして時効中断の効力を認めるのが相当である。
重要事実
上告人(債務者)は、被上告人(債権者)に対し、債務負担の事実がないと主張して本件根抵当権設定登記等の抹消を求める訴訟を提起した。これに対し被上告人は、第一審の第一回口頭弁論期日における答弁書の陳述により、請求棄却を求めるとともに、担保対象となる確定債権50万円の存在および登記の有効性を主張した。上告人は、当該債権が消滅時効にかかっていると主張して争った。
事件番号: 平成9(オ)1771 / 裁判年月日: 平成11年10月21日 / 結論: 棄却
後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができない。
あてはめ
被上告人は、上告人が提起した抹消登記請求訴訟において、単に請求棄却を求めるだけでなく、答弁書を通じて具体的な確定債権(50万円)の取得およびこれに基づく各登記の有効性を積極的に主張している。このような被告による権利の主張は、自己の権利を維持・行使する意思を公に表示したものといえ、実質的に裁判上の請求を行っているのと同視できる。したがって、裁判上の請求に準ずるものとして、当該売掛代金債権の消滅時効を中断させる効力を有すると解される。
結論
被上告人の応訴による債権の主張は、裁判上の請求に準じ、消滅時効中断の効力を生じる。したがって、債権の消滅を前提とする上告人の請求は認められない。
実務上の射程
民法147条1号(現行法147条1項1号)の「裁判上の請求」の解釈に関する重要判例である。債務者から提起された債務不存在確認訴訟や登記抹消請求訴訟において、被告(債権者)が応訴して権利を主張すれば、独立の反訴を提起せずとも時効中断の効力が生じるという実務上の準則を示している。答案上は、時効中断の「権利の上に眠らぬ者」という趣旨から、応訴による権利主張が裁判上の請求に準ずることを論証する際に引用する。
事件番号: 昭和44(オ)1012 / 裁判年月日: 昭和45年2月24日 / 結論: 棄却
甲は、乙が代表者である丙組合と丁会社との紛争解決などのために、戊に合計九〇万円を融資し、その債務担保のため本件土地につき、戊から譲渡担保の設定を受け、一方、乙は、右のような事情から右担保権を取得した甲のために、その権利行使の障害となる根抵当権を自ら放棄したものであるなど判示事実関係のもとにおいては、乙は、その後戊との間…
事件番号: 昭和34(オ)415 / 裁判年月日: 昭和37年5月24日 / 結論: 破棄自判
甲の代理人丙が、その権限をこえて乙との間に甲所有の不動産につき乙のために根抵当権設定契約を締結し、かつ甲名義の偽造登記申請委任状によつてその登記をなした場合、右設定契約を締結しおよび登記申請委任状を乙に交付する等登記申請に協力する関係において、乙が丙に右設定契約の締結ならびに登記の申請について甲の代理権ありと信ずべき正…
事件番号: 昭和39(オ)77 / 裁判年月日: 昭和41年11月18日 / 結論: 棄却
一 登記申請行為自体には、表見代理に関する民法の規定の適用はない。 二 偽造文書によつて登記がされた場合でも、その登記の記載が実体的法律関係に符合し、かつ、登記義務者において登記申請を拒むことができる特段の事情がなく、登記権利者において当該登記申請が適法であると信ずるにつき正当の事由があるときは、登記義務者は右登記の無…
事件番号: 平成23(受)2094 / 裁判年月日: 平成25年2月28日 / 結論: その他
1 既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには,受働債権につき,期限の利益を放棄することができるというだけではなく,期限の利益の放棄又は喪失等により,その弁済期が現実に到来していることを要する。 2 時効によって消滅した債権を自働債権とする相殺をするためには,消滅時効が援用され…