判旨
不動産登記の登記原因とされる売買の日時が真実と合致しない場合であっても、その登記が現在の権利状態に適合するものである限り、その登記は有効である。
問題の所在(論点)
登記原因として記載された売買の日時が実際の権利取得日と異なる場合に、当該登記が不動産登記法上無効となるか。実体関係との適合性が問題となる。
規範
不動産登記の効力について、登記手続上の記載事項(特に原因日付)が真実と相違していても、当該登記が実体上の権利関係(現実の権利状態)と一致し、その公示としての役割を果たしているといえる場合には、その登記は無効とはならない。
重要事実
Dと被上告人(買主)は、昭和23年11月18日に本件家屋の売買予約を締結し、仮登記を了した。その後、同年11月30日に売買の本契約を締結し、昭和24年3月1日に売買を原因とする本登記がなされた。この際、登記原因証書には所有権取得の日時として「昭和24年3月1日」と記載されていたが、原審によれば実際の所有権取得日は「昭和23年11月18日」であった。上告人(売主側)は、登記原因の日時が真実に反することを理由に登記の無効を主張した。
あてはめ
本件において、被上告人はDとの売買契約に基づき、現実に本件家屋の所有権を取得している。登記原因の日時(昭和24年3月1日)が真実の権利取得日(昭和23年11月18日)と相違している事実は認められるものの、当該登記は被上告人が所有者であるという「現在の権利状態」を正確に公示するものである。したがって、実体的な権利移転の事実が認められる以上、原因日付の不一致という形式的な不備のみをもって登記を無効と解することはできない。
結論
登記原因の日時が真実と異なっていても、現実の権利状態に適合する以上、その登記は有効である。上告を棄却する。
事件番号: 昭和25(オ)377 / 裁判年月日: 昭和27年12月4日 / 結論: 棄却
四月一三日に成立した消費貸借上の債務につき、同月三〇日になされた抵当権設定登記において、右消費貸借成立の日が三月三一日と表示されていても、同一の消費貸借を表示するものである以上、右登記は有効である。
実務上の射程
「実体関係に合致する登記」の有効性を肯定するリーディングケースの一つである。答案上は、登記原因(売買・贈与等の名目)の相違や日付の相違が問題となる場面で、公示制度の目的が現在の実体権利の公示にあることを根拠として、登記の有効性を導く際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和30(オ)724 / 裁判年月日: 昭和32年1月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の登記原因が虚偽であっても、その登記が現在の真実の権利関係と合致するものであるならば、当該登記は有効である。 第1 事案の概要:被上告人B1は、本件家屋の所有権を家督相続により適法に取得した。一方で、本件家屋についてはB2を権利者とする所有権取得登記がなされていたが、その登記原因とされた贈与…
事件番号: 昭和36(オ)882 / 裁判年月日: 昭和37年3月30日 / 結論: 棄却
不動産売買により既に所有権の移転がある結果、不動産登記法第二条第一号の仮登記をすべき場合に、売買予約を原因として同条二号の仮登記がなされても、右仮登記は順位保全の効力を有すると解すべきである。
事件番号: 昭和32(オ)748 / 裁判年月日: 昭和35年2月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の所有権取得に関する当事者双方の主張事実が証拠上認められない場合、公簿(登記簿等)の記載をもって一応真実の権利状態に適合するものと推定し、事実認定を行うことは適法である。 第1 事案の概要:本件家屋の所有権取得をめぐり、原告・被告双方が自己の所有権を主張したが、原審において双方の主張する取得原…