一 仮登記仮処分命令の被申請人として亡Dの相続人たる同人の妻Eのほかに、死後認知の確定裁判により相続開始の時に遡つてDの相続人となつたFが表示されていなかつたからといつて、該命令に基づく仮登記は無効といえない。 二 登記簿上の表示にかかわらず、権利取得関係が実体的に真実に合致しているかぎり、所有権移転登記は有効である。
一 仮登記仮処分命令における被申請人の表示の誤膠と仮登記の効力 二 単独で相続登記を経由した共同相続人の一人から第三者が受けた所有権移転登記が有効とされた事例
不動産登記法2条,不動産登記法32条,民法177条,民法896条,民法478条
判旨
死後認知によって相続人となった者がいる場合でも、他の共同相続人から共有持分の全部を取得した譲受人の登記は、実体的な権利移転に合致する限り、他方の相続人の関与がなくとも有効である。
問題の所在(論点)
死後認知により遡及的に相続人となった者が存在する場合において、他の共同相続人のみから得た持分移転登記が実体関係に合致するものとして有効といえるか。
規範
不動産登記の効力は実体的な権利関係との合致により決せられる。共同相続が生じた後に死後認知によって遡及的に相続人となった者が存在する場合であっても、被相続人の債務を承継した共同相続人らに対し、譲受人が売買契約上の代金支払義務を履行して権利を取得したといえるときは、登記名義人が一部の相続人のみであっても、その登記は実体関係に合致し有効となる。
重要事実
亡Dは、本件山林の持分10分の6をGおよび被上告人Bに売却する契約を締結した。この契約は、買主が残代金を支払えば当然に権利が移転する旨の約定であった。その後Dが死亡し、妻Eが単独で相続登記を経たが、後に認知の裁判によりFもDの相続人であることが確定した(死後認知)。被上告人らは、登記名義人であるEに対し残代金を支払い、Eから持分移転登記を受けた。これに対し、Fの権利を承継したとされる上告人側が、Fが関与していない登記は実体に副わない無効なものであると主張して争った。
あてはめ
本件売買契約は代金支払により当然に権利が移転する性質のものであり、Dの死亡により、持分移転義務は共同相続人であるEおよびFに承継された。被上告人らがEに対し残代金を支払ったことで、実体法上はEおよびFから被上告人らに対し本件持分が当然に移転したといえる。登記簿上はEのみが単独相続人として表示され、そこから被上告人らへ移転登記がなされているが、被上告人らが実体上の権利を取得している以上、当該登記は現在の実体的な権利関係に合致していると評価できる。
結論
被上告人らが取得した登記は実体関係に合致しており有効である。したがって、上告人の主張は認められない。
実務上の射程
認知の遡及効(民法784条)がある場合でも、相続開始後に権利を取得した第三者との関係では、登記の実体合致性が優先されることを示した。答案上は、登記の有効性を論じる際、一部の相続人のみが関与した手続であっても、最終的な権利の帰属先が登記名義人と一致していれば有効とする「実体合致の原則」の具体例として活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)1197 / 裁判年月日: 昭和38年2月22日 / 結論: 棄却
一 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。 二 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。 三 …
事件番号: 昭和28(オ)111 / 裁判年月日: 昭和31年7月27日 / 結論: 破棄差戻
不動産の譲渡人から与えられた代理権に基き、譲渡人の死亡後同人の代理人名義の申請によつてなされた移転登記は、それが現在の真実な権利状態に符合するものである限り、対抗力を有し、譲渡人の相続人は譲受人に対し、その抹消を請求することはできない。