所有権保存登記およびその後順次経由された所有権移転登記の抹消登記手続請求訴訟において、最終登記名義人を被告とする請求について敗訴の判決があつた場合でも、その余の被告らに対する請求は訴の利益を失うものではない。
所有権保存登記およびその後順次経由された所有権移転登記の抹消登記手続請求訴訟において一部の被告に敗訴した場合におけるその余の被告に対する請求についての訴の利益の有無
民訴法226条
判旨
不動産登記の抹消登記手続を求める訴えは、被告の意思表示を命ずるものであり、判決の確定により執行が完了するため、登記実行の可否にかかわらず訴えの利益が認められる。
問題の所在(論点)
後続の登記が存在し、実務上の登記実行が不可能である場合において、中間の登記義務者に対する抹消登記手続請求に「訴えの利益」が認められるか。
規範
登記の抹消手続を求める請求は、被告に対し抹消登記申請という意思表示を求める請求である。判決が確定すれば被告が意思表示をしたものとみなされ(民事執行法174条1項参照)、それによって執行が完了する。したがって、実際の抹消登記の実行が可能であるか否かは、当該請求の訴えの利益の有無を左右しない。
重要事実
本件建物の所有者である被上告人は、所有権を取得したことのない上告人A1名義の所有権保存登記、および上告人A2名義の所有権移転請求権保全仮登記・所有権移転登記の抹消を求めた。しかし、本件建物にはA2から第三者Dへの所有権移転登記が既に経由されており、被上告人のDに対する抹消登記請求は認められなかった。そのため、不動産登記法の規定により、中間的な登記である上告人らの登記の「抹消の実行」自体は、物理的・法律的に不可能な状態にあった。
事件番号: 昭和32(オ)1208 / 裁判年月日: 昭和36年4月28日 / 結論: 棄却
不動産につき甲、乙、丙と順次所有権が移転したものとして順次所有権移転登記がなされた場合において、各所有権移転行為が無効であるときは、甲が乙、丙に対し各所有権移転登記の抹消登記請求権を有するほか、乙もまた丙に対し所有権移転登記の抹消登記請求権を有する。
あてはめ
抹消登記手続請求の本質は、被告による登記申請という「意思表示」を求める点にある。判決確定によりその意思表示が擬制されることで当該請求の目的は達せられる。本件において、上告人らは実体法上の権利なく登記を経由しており、被上告人に対し抹消登記手続をする義務を負っている。そうであれば、たとえ第三者Dへの転売登記が存在するために、直ちに登記官による抹消の実行ができないとしても、それは判決確定後の事実上の問題にすぎず、裁判所が意思表示を命ずる判決を出すこと自体の利益は失われない。
結論
登記実行が不可能であっても、抹消登記手続を求める請求は訴えの利益を欠かず、適法である。
実務上の射程
登記手続請求における訴えの利益の判断基準を示す重要判例である。答案上は、順次抹消が必要な事案において、一部の当事者に対する請求が実務上直ちに登記できない状態(利害関係人の承諾欠如など)にあっても、訴えの利益を肯定する根拠として活用する。また、意思表示を命ずる判決の性質(擬制説)の説明としても有用である。
事件番号: 昭和30(オ)981 / 裁判年月日: 昭和35年4月21日 / 結論: 棄却
家屋が、甲から乙、丙を経て丁に転々譲渡された後、乙の同意なしに丁のため右家屋について中間省略登記がなされたときであつても、原審認定のような事情(原判決参照)があつて乙が、右中間省略登記の抹消登記を求める正当な利益を欠くときは、右抹消請求は許されない。
事件番号: 昭和38(オ)164 / 裁判年月日: 昭和39年5月26日 / 結論: 棄却
登記義務者の意思に基づかない登記であつても、現在の実体的権利関係に符合するものであるかぎり、右意思に基づかないとして、当該登記の抹消登記請求をすることは理由がない。
事件番号: 昭和35(オ)1197 / 裁判年月日: 昭和38年2月22日 / 結論: 棄却
一 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。 二 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。 三 …