売買を原因として不動産の所有権移転登記を得た者、および、同人から抵当権設定登記と代物弁済契約による所有権移転請求権保全の仮登記を得た者を共同被告として、右不動産の所有者として売買の不存在を主張する者から、登記の抹消を求める訴は、訴訟の目的が共同訴訟人の全員につき合一にのみ確定すべき場合にあたらない。
必要的共同訴訟にあたらない事例
民訴法62条
判旨
売買無効を理由とする所有権移転登記抹消請求と、その転得者等に対する抵当権設定登記等の抹消請求が併合された訴訟は、必要的共同訴訟には該当しない。したがって、共同訴訟人の一人が期間内に控訴しても、期間を経過した他の共同訴訟人の控訴が適法となることはない。
問題の所在(論点)
売買無効に基づく所有権登記抹消請求(対売買相手方)と、それを前提とする抵当権等抹消請求(対転得者等)が併合された場合、必要的共同訴訟として扱われるか。また、共同訴訟人の一人が提起した控訴の効力が、期間を徒過した他の共同訴訟人に及ぶか(上訴の不可分性の成否)。
規範
民事訴訟法38条後段の共同訴訟において、必要的共同訴訟(同法40条)と解されるためには、訴訟の目的が共同訴訟人の全員につき合一にのみ確定すべき場合であることを要する。各被告に対する請求の原因および内容が独立しており、各別に判断がなされても法律上の矛盾が生じない場合には、通常共同訴訟として各人の訴訟行為は独立して効力を有する(独立の原則)。
重要事実
不動産所有者である被上告人が、上告人に対し売買の不存在を理由とする所有権移転登記抹消を請求し、併せて上告人から抵当権設定等を受けた共同被告会社に対し各登記抹消を請求した。第一審判決後、共同被告会社は控訴期間内に控訴したが、上告人(被告)による控訴は期間経過後であった。上告人は、本件が必要的共同訴訟であり、会社の控訴の効力が自己にも及ぶため、自身の控訴も適法であると主張した。
あてはめ
上告人に対する請求は、売買の不存在を原因とする所有権移転登記の抹消であり、会社に対する請求は、無権利者の処分行為としての抵当権設定等の抹消である。これらの原因および請求は各々独立しており、訴訟の目的が全員につき合一にのみ確定すべき場合に該当しない。ゆえに、本件は通常共同訴訟であり、共同被告会社の適法な控訴によっても、控訴期間を徒過した上告人の控訴が適法になるという関係にはない。したがって、上告人の控訴は不適法であるといえる。
結論
本件は必要的共同訴訟ではないため、控訴期間経過後に控訴した上告人の訴えは不適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
権利外観理論や登記の公信力が関わる事案であっても、実体法上の権利関係が論理的に連鎖するに過ぎない場合は通常共同訴訟に留まる。司法試験においては、民訴法40条の適用範囲を限定的に解する「管理処分権」や「実体法上の性質」という基準を補強する判例として、上訴の合一確定が必要か否かの判断で引用すべきである。
事件番号: 昭和27(オ)295 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: その他
抵当権実行による競売手続において競落により不動産を取得した者およびその者から右不動産を買受けた者を共同被告として右不動産の所有者として抵当権の効力を否定する者から各所有権取得登記の抹消を求める訴は、訴訟の目的が共同訴訟人の全員につき合一にのみ確定すべき場合に当らない。
事件番号: 昭和35(オ)881 / 裁判年月日: 昭和37年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の者に対しそれぞれ別個の登記手続を求める訴訟は、たとえ原因が同一であっても、判決の内容を合一に確定すべき固有必要的共同訴訟には当たらない。そのため、被告ごとに事実認定が異なり、各判決の内容が互いに抵触することになっても違法ではない。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、Dに対する所有権取得登記…
事件番号: 昭和34(オ)44 / 裁判年月日: 昭和38年3月12日 / 結論: 棄却
所有権移転登記の共有名義人を被告として当該登記の抹消登記手続を求める訴訟は、固有必要的共同訴竈訟と解すべきである。