一 必要的共同訴訟にあたらないとされた事例 二 代理人が本人名義の有合印を使用して右代理人宛の委任状を作成した場合において右委任状の作成が代理権の範囲内の行為と判断された事例
判旨
複数の者に対しそれぞれ別個の登記手続を求める訴訟は、たとえ原因が同一であっても、判決の内容を合一に確定すべき固有必要的共同訴訟には当たらない。そのため、被告ごとに事実認定が異なり、各判決の内容が互いに抵触することになっても違法ではない。
問題の所在(論点)
登記抹消請求等の訴訟において、登記原因を共通にする被告間の関係は必要的共同訴訟に当たるか。また、同一事実の認定が被告間で異なることが許されるか。
規範
民事訴訟法38条後段の共同訴訟において、固有必要的共同訴訟(同法40条1項)と解されるのは、訴訟の目的が共同訴訟人の全員につき合一にのみ確定すべき場合に限られる。数人に対して登記手続を請求する訴訟は、実体法上の管理処分権が共同で行使されるべき場合等でない限り、各被告との関係で独立に判断されるべきであり、判決の抵触が許されない絶対的な必要性はない。
重要事実
上告人(原告)は、Dに対する所有権取得登記回復登記請求訴訟と、被上告人に対する本件各登記抹消請求訴訟を提起した。上告人は、Dへの所有権移転登記等に用いられた委任状が偽造であると主張した。原審において、Dとの訴訟では委任状が偽造であると判示される一方で、被上告人との訴訟では当該委任状が代理権の範囲内で作成された有効なものであると認定され、上告人の請求が排斥された。上告人は、両訴訟が必要的共同訴訟であり、認定が抵触するのは違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件における被上告人に対する登記抹消請求訴訟と、Dに対する登記回復登記請求訴訟は、法律上、判決の内容を合一に確定すべき場合に当たらない。原審が、Dとの関係では委任状を偽造としながら、被上告人との関係では代理権の範囲内での作成であり偽造ではないと認定したことは、各被告との関係で独立に証拠評価を行った結果である。両訴訟は必要的共同訴訟ではない以上、事実認定の確定を異にすることによって、被告間で判決内容が抵触したとしても、民事訴訟法上の違法があるとはいえない。
結論
本件各訴訟は必要的共同訴訟には当たらない。したがって、被告ごとに事実認定が異なり、判決内容が抵触したとしても適法である。
実務上の射程
登記手続請求において、前手と後手を共同被告とする場合や、複数の譲受人を被告とする場合でも、通常は通常共同訴訟として扱われることを確認した判例である。答案上は、固有必要的共同訴訟の成否を判断する際に、管理処分権の帰属や合一確定の必要性の有無を検討する材料として用いる。
事件番号: 昭和28(オ)686 / 裁判年月日: 昭和31年9月28日 / 結論: 棄却
売買を原因として不動産の所有権移転登記を得た者、および、同人から抵当権設定登記と代物弁済契約による所有権移転請求権保全の仮登記を得た者を共同被告として、右不動産の所有者として売買の不存在を主張する者から、登記の抹消を求める訴は、訴訟の目的が共同訴訟人の全員につき合一にのみ確定すべき場合にあたらない。
事件番号: 昭和35(オ)234 / 裁判年月日: 昭和37年10月5日 / 結論: その他
甲乙丙三棟の建物を所有する債務者が、未登記の甲建物の所有権保存登記をなすべく司法書士に委任したところ、甲建物を主たる建物、乙丙建物を付属建物と表示する登記がなされ、次いで、債権者の手により甲乙丙建物を目的物とする抵当権設定登記が経由されたのに対し、抵当権設定契約の不存在を理由として右抵当権設定登記の抹消登記手続を請求す…
事件番号: 昭和27(オ)295 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: その他
抵当権実行による競売手続において競落により不動産を取得した者およびその者から右不動産を買受けた者を共同被告として右不動産の所有者として抵当権の効力を否定する者から各所有権取得登記の抹消を求める訴は、訴訟の目的が共同訴訟人の全員につき合一にのみ確定すべき場合に当らない。
事件番号: 昭和33(オ)767 / 裁判年月日: 昭和35年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記手続において、代理人が本人及び相手方の双方を代理する場合であっても、それが既に成立している法律関係に基づく登記義務の履行であるときは、民法108条本文の禁止する双方代理には当たらない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の間の不動産取引に関連し、特定の書面(丙第2号証)が上告人の意思に基…