不動産につき甲、乙、丙と順次所有権が移転したものとして順次所有権移転登記がなされた場合において、各所有権移転行為が無効であるときは、甲が乙、丙に対し各所有権移転登記の抹消登記請求権を有するほか、乙もまた丙に対し所有権移転登記の抹消登記請求権を有する。
不動産につき甲、乙、丙と順次所有権が移転したものとして順次所有権移転登記がなされた場合において、各所有権移転登記が無効であるときは、乙は丙に対し抹消登記請求権を有するか。
不動産登記法26条,民法177条
判旨
不動産登記制度が現在の権利関係と過去の変動過程の双方を如実に表現することを目的とする以上、現在実質的な権利を有しない者であっても、権利変動の当事者として登記の是正に関し利害関係を有する限り、登記名義人に対し登記請求権を行使できる。
問題の所在(論点)
物権変動の過程において、現在は既に実質的な権利を失っている者、または原因行為が無効であったために当初から実質的権利を有しない者が、登記の是正(抹消)を求める登記請求権を有するか。登記請求権の発生基盤としての「利害関係」の有無が問題となる。
規範
不動産登記法は、不動産について登記簿上、現在の権利関係を明らかにするとともに、これに先行する権利変動の過程をも如実に表現することを目的とする。したがって、権利変動の当事者となった者は、その過程において真実と符合しない無効の登記があるときは、たとえ既に物権を他に移転して現在は実質的権利者でないとしても、登記の是正に関して利害関係を有する限り、登記名義人に対し登記請求権を有する。これは、権利変動の原因たる法律行為が法律上無効であった場合における当該法律行為の当事者についても同様である。
重要事実
国(被上告人)は、本件土地を買い受けたとして所有権移転登記を具備したが、その後、上告人らに対して当該登記の抹消を請求した。上告人側は、国が既に実質的な所有権を有していない以上、登記抹消請求権を有しないと主張して争った。なお、国が本件各登記を抹消した後は、真の所有者であるDに対して、国名義の所有権取得登記を抹消すべき義務を負う関係にあった。
あてはめ
不動産登記制度の目的(権利変動過程の忠実な反映)に照らせば、登記請求権は現在の所有権者のみに専属するものではない。本件において、国は本件各登記の抹消後に実質上の権利者Dに対して国名義の登記を抹消する義務を負っている。このような立場にある国は、登記簿上の権利変動過程を真実に合致させることについて正当な「利害関係」を有する者といえる。したがって、たとえ国が現在実質的な権利者でないとしても、登記名義人である上告人らに対し、無効な登記の抹消を求めることができる。
結論
国は、本件登記の抹消について利害関係を有する以上、実質的権利者でなくとも上告人らに対して登記抹消請求権を行使できる。
実務上の射程
登記請求権の発生根拠として、物権的登記請求権(所有権に基づくもの)だけでなく、物権変動の当事者が有する「登記制度上の利害関係」に基づく請求を認めた点に意義がある。答案上では、中間省略登記の是正や、転々譲渡された後の無効登記抹消において、中間者が原告となる場合の原告適格(実体法上の請求権)を基礎づける論拠として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)1128 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
甲が乙から宅地を買受けその旨の所有権取得登記を経由したのち、乙の債務不履行を原因として右売買契約が解除された場合には、甲は乙に対し右登記の抹消登記手続を求めることができる。
事件番号: 昭和36(オ)1162 / 裁判年月日: 昭和38年1月18日 / 結論: 破棄差戻
譲渡担保契約において、期限に債務の弁済がないときは担保物件を債務の代物弁済に供する旨の約定を含む場合、被担保債権額に比し担保物件の価額が著しく高額であつて、債務者の経済的困窮に乗じて右の約定をなしたものとして右約定部分を公序良俗に反し無効と解すべきときでも、必ずしも譲渡担保契約全部が無効となるとは限らない。
事件番号: 昭和31(オ)793 / 裁判年月日: 昭和38年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律上の要件を欠く家督相続人選定は無効であり、戸籍上の記載が抹消された後は、表見相続人として権利者たる保護を受ける余地はない。真正相続人以外の第三者であっても、表見相続人が自ら権利を主張する場合には、その相続の無効を争い得ると解される。 第1 事案の概要:被相続人Fが死亡し、法定・指定の家督相続人…