甲の相続権を乙が侵害している場合、甲の相続人丙の乙に対する相続回復請求権の消滅時効の期間二〇年の起算点は、丙の相続開始の時ではなく、甲の相続開始の時と解すべきである。
相続権を侵害された者の相続人が右侵害者に対して有する相続回復請求権の消滅時効の起算点
民法884条
判旨
相続回復請求権(民法884条)の消滅時効の起算点は、数次の相続が発生している場合であっても、丙の相続開始時ではなく、最初の相続(甲の相続)が開始された時である。
問題の所在(論点)
数次の相続が生じている場合において、民法884条後段が定める相続回復請求権の消滅時効(20年)の起算点は、現請求者の相続開始時か、それとも元の被相続人の相続開始時か。
規範
相続回復請求権(民法884条後段)の消滅時効期間(20年)の起算点は、侵害された被相続人の相続開始の時と解すべきである。数次の相続を経て相続権を承継した者が請求する場合であっても、当初の被相続人にかかる相続開始の時が基準となる。
重要事実
被相続人甲の相続について、共同相続人である乙の系列に属する者たちが、本件土地建物の所有権が自己のみにあると信じて占有・管理を行い、他の共同相続人(上告人ら)の共有持分を認めず、その相続権を侵害していた。上告人らは、数次の相続を経て相続権を承継した丙の立場から相続回復を請求したが、消滅時効の起算点がいつになるかが争われた。
事件番号: 昭和37(オ)1258 / 裁判年月日: 昭和39年2月27日 / 結論: 棄却
甲の相続権を乙が侵害している場合、甲の相続人丙の乙に対する相続回復請求権の消滅時効の期間二〇年の起算点は、丙の相続開始の時ではなく、甲の相続開始の時と解すべきである。
あてはめ
本件において、被相続人甲の相続権が乙によって侵害されている。この甲の相続権を承継した丙が、乙に対して相続回復請求権を行使する場合、時効の起算点は丙自身の相続開始時ではなく、当初の相続権侵害が発生した基礎となる甲の相続開始時である。原審において、相手方らは自らの所有権を信じて管理行為を行い、上告人らの相続権を侵害していた事実が認められている。したがって、甲の相続開始から20年が経過していれば、時効は完成する。
結論
相続回復請求権の消滅時効の起算点は、当初の被相続人の相続開始時であり、丙の相続開始時ではない。上告棄却。
実務上の射程
相続回復請求権の長期消滅時効の起算点を明確にした判例である。答案上は、相続回復請求権の要件を検討する際、特に数次の相続が発生している事案で、期間経過による権利消滅を認定するための基礎として引用する。表見相続人による占有が長期に及ぶ場合の法律関係の安定を重視する趣旨として理解される。
事件番号: 昭和38(オ)625 / 裁判年月日: 昭和40年5月28日 / 結論: 棄却
相続回復請求権の二〇年の時効は、数次の相続が行なわれた場合でも、当初の被相続人死亡の時より起算して二〇年を経過したときに完成する。
事件番号: 昭和40(オ)246 / 裁判年月日: 昭和41年12月20日 / 結論: 棄却
取得時効の成否の判断にあたり、占有開始の起算日についてその弁論が、判示のように口頭弁論調書に記載されている以上、右日時をもつて占有を開始した事は当事者間に争いがない旨判示しても、原判決には違法があるとはいえない。