継続した地代不払を一括して一個の解除原因とする賃貸借契約の解除権の消滅時効は、最後の地代の支払期日が経過した時から進行する。
継続した地代不払を一括して一個の解除原因とする賃貸借契約の解除権の消滅時効の起算点
民法166条1項,民法541条
判旨
賃貸借契約の解除権は形成権として消滅時効(旧民法167条1項)にかかるが、継続的な賃料不払を一括して一個の解除原因とする場合、その消滅時効は最初の不払時ではなく、最終の支払期日が経過した時から進行する。
問題の所在(論点)
数回にわたる賃料不払を理由とする賃貸借契約の解除権の消滅時効について、その起算点はいつか。特に、無催告解除特約がある場合に最初の不払時から進行するかが問題となる。
規範
賃貸借契約の解除権は形成権であるため、民法167条1項(改正前)により、権利を行使することができる時から10年の経過により時効消滅する。もっとも、長期間の賃料支払債務の不履行がほぼ同一事情の下で時間的に連続してなされ、これを一括して一個の解除原因として解除権を行使する場合、その消滅時効は、最初の不払時ではなく、最終の支払期日が経過した時から進行する。
重要事実
賃貸人Aは賃借人Bに対し、土地を建物所有目的で賃貸していた。Aは昭和32年に地代増額を請求したが、Bはこれを拒み、不足する額の供託を続けた。Aは昭和43年に、昭和32年8月分から昭和43年1月分までの長期にわたる地代支払債務の不履行を理由として、無催告解除の特約に基づき本件契約を解除し、土地明渡しを求めた。これに対しBは、最初の不払が生じた昭和32年時点から既に10年が経過しており、解除権は時効消滅したと抗弁した。
あてはめ
本件において、Aが主張する解除原因は昭和32年から約10年間にわたる地代不払である。これら長期間の不履行は、地代増額をめぐる紛争という「ほぼ同一事情の下」において「時間的に連続」して行われたものである。したがって、Aはこれらを一括して「一個の解除原因」として解除権を行使していると解するのが相当である。そうであれば、たとえ一回の不払で解除可能とする無催告解除特約があったとしても、各不払ごとに個別の解除権が独立して進行するとみるべきではなく、一連の不履行が終了した「最終支払期日の経過時」を起算点とすべきである。
結論
本件解除権の消滅時効は、最終の賃料支払期日が経過した時から進行するため、昭和43年の解除意思表示時点で時効は完成していない。
実務上の射程
継続的契約における債務不履行解除において、債権者が過去の不履行をまとめて解除理由とする場合の時効起算点を示す。無催告解除特約がある場合でも、債権者が寛容に見守っていた期間の不履行を理由とする解除を安易に時効で否定させない実務上の意義がある。答案では、時効の起算点(民法166条1項)の解釈として、解除原因の「一体性」を認定する際の規範として用いる。
事件番号: 昭和53(オ)1440 / 裁判年月日: 昭和55年12月11日 / 結論: 棄却
債借権の譲渡を承諾しない賃貸人は、無断譲渡を理由とする契約解除権が時効消滅した場合であつても、所有権に基づき、賃借権の無断譲受人に対し、賃貸借の目的物の明渡を求めることができる。
事件番号: 昭和41(オ)660 / 裁判年月日: 昭和41年12月1日 / 結論: 棄却
賃料の催告と右催告の趣旨不履行による賃貸借契約解除の意思表示との間に約一四年のへだたりがあつても、原審認定(原判決理由参照)のごとく、相手方においてもはや右催告に基づく解除権の行使はないものと信ずべき正当な事由が生じたとはいえない事情のもとでは、右意思表示のときまで右解除権は有効に存続していたと解することができる。
事件番号: 昭和41(オ)1362 / 裁判年月日: 昭和42年7月20日 / 結論: 棄却
借地法第一〇条による建物買取請求権の消滅時効期間は一〇年と解すべきである。