借地法第一〇条による建物買取請求権の消滅時効期間は一〇年と解すべきである。
借地法第一〇条による建物買取請求権の消滅時効期間
借地法10条,民法167条1項
判旨
借地法10条に基づく建物買取請求権は形成権の一種であるが、その消滅時効については民法167条1項(当時)が適用され、権利行使が可能となった時から10年で消滅する。
問題の所在(論点)
旧借地法10条(現行借地借家法14条等)に基づく建物買取請求権が、消滅時効(民法167条1項、現行166条1項)の対象となるか。また、その起算点はいつか。
規範
建物買取請求権は、行使により売買契約成立と同様の効果を生じさせる形成権であるが、その消滅時効については一般の債権と同様、民法167条1項(現行166条1項)を適用すべきである。したがって、同権利は「権利を行使することができる時」から10年の消滅時効にかかる。
重要事実
本件土地の転借人であった上告人は、賃貸人(被上告人)に対し、借地法10条に基づく建物買取請求権を昭和41年4月11日に行使した。しかし、賃貸人は遅くとも昭和30年7月末日までに、上告人に対し転借権の譲渡・転々貸を承認しない旨を申し入れていた。この拒絶により、上告人が買取請求権を行使することが可能となった時期は、遅くとも昭和30年7月末日であったと認定された。
あてはめ
建物買取請求権は形成権であるが、10年の時効にかかると解される。本件において、上告人が権利を行使できるようになったのは、賃貸人が譲渡等の不承認を確定的に示した昭和30年7月末日である。上告人が実際に行使したのは昭和41年4月11日であり、起算点から10年以上が経過している。したがって、当該権利は時効により消滅しているといえる。
結論
上告人の建物買取請求権は消滅時効にかかっており、上告人の請求は認められない(棄却)。
実務上の射程
形成権であっても消滅時効の対象となることを明示した点に意義がある。現行借地借家法下の建物買取請求権(13条、14条)にも射程が及ぶ。答案では、時効の成否が争点となる場合に「権利行使が可能となった時」を事実関係から特定し、10年の期間経過を指摘する枠組みとして活用する。
事件番号: 昭和27(オ)1162 / 裁判年月日: 昭和29年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現借地借家法14条)の建物買取請求権は、従来の借地権の存続中に第三者が建物等を取得した場合にのみ認められ、借地契約終了後に建物を取得した者には適用されない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地に係る従来の土地賃貸借契約が既に終了した後に、当該土地上の建物を取得した。その後、上告人は…
事件番号: 昭和32(オ)260 / 裁判年月日: 昭和33年4月8日 / 結論: 棄却
第三者が、賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合において、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法第一〇条に基く第三者の建物買取請求権は、これによつて消滅するものと解すべきである。
事件番号: 昭和31(オ)570 / 裁判年月日: 昭和35年2月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】宅地賃貸借が売買契約の成立により消滅し、その際、売買契約が解除されても賃貸借を復活させない旨の合意がなされた場合には、賃借人から建物と同権利を譲り受けた第三者は、旧借地法10条に基づく建物買取請求権を主張できない。 第1 事案の概要:宅地の賃借人Dは、賃貸人との間で調停に基づき当該宅地の売買契約を…