債借権の譲渡を承諾しない賃貸人は、無断譲渡を理由とする契約解除権が時効消滅した場合であつても、所有権に基づき、賃借権の無断譲受人に対し、賃貸借の目的物の明渡を求めることができる。
賃借権の無断譲渡を理由とする契約解除権が時効消滅した場合と賃貸人の譲受人に対する明渡請求の許否
民法601条,民法612条
判旨
賃借権の無断譲渡において、賃貸人の解除権が消滅時効にかかったとしても、賃貸人は無断譲受人に対し所有権に基づく明渡請求を妨げられない。
問題の所在(論点)
賃借権が無断譲渡された場合において、賃貸人の有する契約解除権が時効消滅したことが、無断譲受人に対する所有権に基づく明渡請求の可否に影響を及ぼすか。
規範
賃貸人は、賃借権の無断譲渡を承諾しない場合、賃貸借契約を解除せずとも所有権に基づき無断譲受人に対し目的物の明渡しを求めることができる。また、賃借人に対する関係で解除権が時効により消滅したとしても、そのことは無断譲受人に対する所有権に基づく明渡請求権の行使を妨げるものではない。
重要事実
上告人(被告・譲受人)は、本件建物を譲り受けるとともに本件土地の賃借権の譲渡を受けたが、賃貸人である被上告人ら(原告)の承諾を得ていなかった。また、当該無断譲渡について、被上告人らとの信頼関係を破壊しないと認めるに足りる特段の事情も存しなかった。被上告人らが無断譲渡を理由とする明渡請求を提起したところ、上告人は、賃借権譲渡から10年が経過しており、契約解除権が消滅時効にかかっていると主張して争った。
あてはめ
賃貸人が無断譲受人に対して行う明渡請求は、契約上の権利である解除権の行使とは別個の、物権的請求権たる所有権に基づく請求である。したがって、仮に譲渡人(賃借人)との関係で契約解除権が民法166条等により消滅時効にかかったとしても、そのことは所有権の効力として当然に認められる無断占有者に対する明渡請求権に何ら影響を及ぼすものではない。本件においても、信頼関係破壊の特段の事情がない以上、解除権の消滅に関わらず明渡請求が認められる。
結論
解除権の消滅時効の成否にかかわらず、被上告人らの明渡請求は正当である。
実務上の射程
無断譲受人が対抗要件を備えていても、賃貸人の承諾がない限り占有は不法占有となる。答案では、契約解除の要否を検討する文脈や、物権的請求権に対する消滅時効の抗弁を否定する論理として活用できる。特に「解除を待たずに明渡請求できる」点と「解除権の消滅は影響しない」点をセットで押さえるべきである。
事件番号: 昭和33(オ)518 / 裁判年月日: 昭和35年9月20日 / 結論: 棄却
一 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。 二 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された後、建物取得者は買取代…
事件番号: 昭和36(オ)646 / 裁判年月日: 昭和38年4月23日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合に、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法一〇条に基づく第三者の建物買取請求権はこれによつて消滅するものと解するのを相当とする。