参加人が、訴訟の目的たる権利の譲渡を受けたとして民訴法第七三条による参加をした場合において、参加人と右譲渡人との間に実質上なんらの利害関係がなく、かつ、右譲渡人を相手方としないときには、右譲渡人の訴訟代理人であつた弁護士が参加人の訴訟代理人として選任され、訴訟行為をしたとしても、弁護士法第二五条に違反しない(第二小法廷昭和三七年四月二〇日判決、民集一六巻四号九一三頁参照)。
原告代理人である弁護士が参加人代理人として民訴法第七三条による参加申立をした場合において弁護士法第二五条第一号に違反しないとされた事例
民訴法73条,弁護士法25条1号
判旨
民事訴訟において、一方当事者の訴訟代理人であった弁護士が、同当事者の脱退に伴い訴訟を引き継いだ参加人の代理人に就任する行為は、両者間に実質的な利害対立がない限り、弁護士法25条や民法108条に違反しない。
問題の所在(論点)
訴訟から脱退した当事者の代理人であった弁護士が、その地位を承継して参加した当事者の代理人に就任する行為が、弁護士法25条の職務を行い得ない事件の制限や、民法108条の禁止する双方代理に抵触するか。
規範
弁護士法25条が規定する職務を行い得ない事件、または民法108条(自己契約・双方代理)の禁止に抵触するか否かは、形式的な当事者の交替のみならず、旧当事者と新当事者(承継人等)との間に実質的な利害関係の対立が存在するか否かによって判断すべきである。実質的な利害関係の対立がない場合には、同一の弁護士が双方の代理人を務めることになっても、訴訟の公正や当事者の利益を害するおそれがないため、これらの禁止規定には抵触しない。
重要事実
D株式会社の訴訟代理人であった弁護士菊地一民は、同社の訴訟代理人を辞任すると同時に、同訴訟に民訴法73条(現47条等に相当)に基づく訴訟参加を申し出た被上告人B農業協同組合の代理人に就任した。原審において、D社はB組合の主張する請求原因事実を認めた上で、上告人の同意を得て訴訟から脱退した。上告人は、この弁護士の行為が双方代理の禁止等に抵触し違法であると主張して上告した。
事件番号: 昭和34(オ)987 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
訴訟繋属中その訴訟の目的たる権利の譲渡を受けたとする者が、民訴第七三条、第七一条により訴訟参加を為す場合において、譲渡人たる参加人と前主たる原告との間に権利の譲渡につき争がなく、参加申立においても原告を相手方としないときは、原告の代理人として本訴訟を追行して来た弁護士が、更に、参加人たらんとする者の委任を受け、その代理…
あてはめ
本件において、被上告人(参加人)は、脱退したD社の訴訟法上の地位を承継する形で参加している。D社は参加人の請求原因を認めて脱退しており、被上告人とD社との間には実質的な利害関係の対立は認められない。したがって、D社の元代理人が引き続き被上告人の代理人として訴訟行為を行っても、職務の公正を害するものではなく、民法108条の類推適用や弁護士法25条の禁止規定に抵触する問題は生じないといえる。
結論
本件における弁護士の代理行為は適法であり、弁護士法25条および民法108条に違反しない。
実務上の射程
訴訟引受や訴訟参加に伴う当事者交替の場面で、新旧当事者間の利害が一致している場合に、同一の弁護士が継続して受任することの可否を判断する際の根拠となる。実務上は、形式的な当事者の対立よりも、実質的な利害対立の有無を重視する判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)1043 / 裁判年月日: 昭和35年3月22日 / 結論: 棄却
訴訟委任を受けた弁護士が係争物につき委任者との間に売買予約をしても、これがため弁護士法第二八条により同人の訴訟の受任およびこれに基く訴訟行為が無効となるものではない。
事件番号: 昭和43(オ)1309 / 裁判年月日: 昭和45年3月17日 / 結論: 棄却
建物収去土地明渡の判決においては、土地の地積および建物の床面積を、計量法所定の計量単位によらないで、尺貫法による計量単位によつて表示しても違法ではない。
事件番号: 昭和34(オ)777 / 裁判年月日: 昭和36年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】独立当事者参加訴訟(民訴法47条)において、原告、被告、参加人の三当事者間で権利関係を合一に確定する必要がある場合、原告が参加人の請求を認諾したとしても、被告がこれを争っている限り、その認諾は効力を生じない。 第1 事案の概要:原告Bが被告に対して訴えを提起し、さらに参加人が民事訴訟法71条(現4…
事件番号: 昭和40(オ)1070 / 裁判年月日: 昭和41年9月8日 / 結論: 棄却
甲から事件の委任を受けた弁護士が、弁護士法第二五条第三号に違反して、甲の同意を得ることなく、当該事件の相手方乙の依頼による他の事件についてその職務を行なつた場合でも、他の事件の相手方が甲以外の者であるときは、右弁護士がした乙の依頼による事件の訴訟行為は有効と解すべきである。