訴訟繋属中その訴訟の目的たる権利の譲渡を受けたとする者が、民訴第七三条、第七一条により訴訟参加を為す場合において、譲渡人たる参加人と前主たる原告との間に権利の譲渡につき争がなく、参加申立においても原告を相手方としないときは、原告の代理人として本訴訟を追行して来た弁護士が、更に、参加人たらんとする者の委任を受け、その代理人として右参加申立をしても、その弁護士の行為は、弁護士法第二五条第一号に違反しないと解すべきである。
原告代理人である弁護士が参加人代理人として民訴第七三条、第七一条による参加申立をした場合につき、弁護士法第二五条第一号に違反しないとされた事例
民訴法73条,民訴法71条,弁護士法25条1号
判旨
訴訟係属中に目的物を譲り受けた者が、前主との間に争いがない状態で参加申立を行う際、前主の代理人弁護士が譲受人の代理人を兼ねても、弁護士法25条1号には違反しない。
問題の所在(論点)
訴訟係属中の権利譲渡に伴う当事者参加において、前主(原告)の代理人が譲受人(参加人)の代理人を兼ねる行為が、弁護士法25条1号の「職務を行い得ない事件」に該当し、訴訟行為が無効となるか。
規範
弁護士法25条1号が職務を行い得ない事件として規定する「相手方の協議を受けて賛助し、又はその代理人となった事件」とは、依頼者の信頼を裏切り、弁護士の品位を汚すおそれのある行為を指す。したがって、訴訟係属中に権利を譲受した者が独立当事者参加(民訴法47条、旧71条等)をする場合において、①譲受人と前主との間に譲渡の事実について争いがなく、かつ、②参加申立において前主を相手方としないときは、前主の代理人が譲受人の代理人として参加申立をしても、依頼者の信頼を裏切るものでも弁護士の品位を汚すものでもないため、同条1号に違反しない。
重要事実
原告(被上告人)が土地の明渡を求めて提訴中、訴訟の目的である土地を参加人(被上告人)らが譲り受けた。参加人らは、被告らのみを相手方として本件土地の明渡を求める当事者参加を申し立て、原告に対しては何ら請求を行わなかった。この参加申立において、原告の代理人弁護士が、参加人らの代理人として記名捺印した。被告(上告人)らは、当該弁護士が原告と参加人の双方を代理したことは弁護士法25条1号に違反し、参加申立は無効であると主張した。なお、原告と参加人との間に土地譲渡の事実について争いはなかった。
事件番号: 昭和39(オ)1498 / 裁判年月日: 昭和41年5月19日 / 結論: 棄却
参加人が、訴訟の目的たる権利の譲渡を受けたとして民訴法第七三条による参加をした場合において、参加人と右譲渡人との間に実質上なんらの利害関係がなく、かつ、右譲渡人を相手方としないときには、右譲渡人の訴訟代理人であつた弁護士が参加人の訴訟代理人として選任され、訴訟行為をしたとしても、弁護士法第二五条に違反しない(第二小法廷…
あてはめ
本件では、土地を譲り受けた参加人らと前主である原告との間に権利譲渡の事実について争いがない。また、参加申立の内容は被告らのみを相手方とするもので、原告を相手方としていない。このような状況下では、原告の代理人弁護士が参加人らの代理人を兼ねたとしても、原告との利害対立は生じず、原告の信頼を裏切るものとはいえない。また、円滑な訴訟承継を促進する側面もあり、弁護士としての品位を汚す行為とも評価できない。したがって、本件における弁護士の行為は弁護士法25条1号に違反しないと解される。
結論
弁護士法25条1号には違反せず、本件参加申立は有効である。上告棄却。
実務上の射程
訴訟承継的側面を持つ参加において、譲渡当事者間に争いがない「片側参加」の形式をとる場合に限定される。実質的な利害対立が存在しない形式的な重複代理であれば同条の禁止に触れないという判断枠組みを示した。答案上は、弁護士法25条の趣旨(信頼保護・品位保持)から例外を認める論理として活用できる。
事件番号: 昭和40(オ)1070 / 裁判年月日: 昭和41年9月8日 / 結論: 棄却
甲から事件の委任を受けた弁護士が、弁護士法第二五条第三号に違反して、甲の同意を得ることなく、当該事件の相手方乙の依頼による他の事件についてその職務を行なつた場合でも、他の事件の相手方が甲以外の者であるときは、右弁護士がした乙の依頼による事件の訴訟行為は有効と解すべきである。
事件番号: 昭和34(オ)777 / 裁判年月日: 昭和36年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】独立当事者参加訴訟(民訴法47条)において、原告、被告、参加人の三当事者間で権利関係を合一に確定する必要がある場合、原告が参加人の請求を認諾したとしても、被告がこれを争っている限り、その認諾は効力を生じない。 第1 事案の概要:原告Bが被告に対して訴えを提起し、さらに参加人が民事訴訟法71条(現4…
事件番号: 昭和32(オ)1043 / 裁判年月日: 昭和35年3月22日 / 結論: 棄却
訴訟委任を受けた弁護士が係争物につき委任者との間に売買予約をしても、これがため弁護士法第二八条により同人の訴訟の受任およびこれに基く訴訟行為が無効となるものではない。
事件番号: 昭和33(オ)1017 / 裁判年月日: 昭和36年4月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審における訴訟代理人の権限は、特段の事情がない限り、同一の事件について上訴審における代理権をも含むものと解される。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)において被上告人を代理した弁護士に代理権がなかった旨を主張して上告した。しかし、記録上、当該弁護士に対しては第一審段階で訴訟代理委任状が…