訴訟委任を受けた弁護士が係争物につき委任者との間に売買予約をしても、これがため弁護士法第二八条により同人の訴訟の受任およびこれに基く訴訟行為が無効となるものではない。
訴訟委任を受けた弁護士が係争物につき売買予約をした場合と同人の訴訟の受任およびこれに基く訴訟行為の効力。
弁護士法28条
判旨
弁護士が弁護士法28条に違反して受任中の事件の目的である権利を譲り受ける行為をしたとしても、その私法上の効力や刑事罰の有無は別として、当該事件の訴訟委任および訴訟行為が当然に無効となるものではない。
問題の所在(論点)
弁護士が受任中の事件の目的である権利を譲り受ける行為(弁護士法28条違反)をした場合、その弁護士に対する訴訟委任および当該弁護士が行った訴訟行為の効力は否定されるか。
規範
弁護士法28条の趣旨は、弁護士が事件に介入して利益を得ることで職務の公正・品位を害し、濫訴を招く弊害を防止することにある。したがって、同条に抵触する取引行為が行われた場合、その取引の私法上の効力が否定されたり刑罰(同法77条)の対象となり得たりすることはあっても、その権利に関する訴訟委任およびこれに基づく訴訟行為が直ちに無効とされるものではない。
重要事実
賃貸人(被上告人)が賃借人(上告人)に対し、賃料延滞を理由として土地賃貸借契約を解除した。この紛争について賃貸人から訴訟委任を受けていた弁護士が、受任中に訴訟の目的物である土地の一部について、賃貸人から買い受ける予約をした。賃借人側は、この売買予約が弁護士法28条に違反し、当該弁護士による訴訟行為も無効であると主張して争った。
事件番号: 昭和40(オ)1070 / 裁判年月日: 昭和41年9月8日 / 結論: 棄却
甲から事件の委任を受けた弁護士が、弁護士法第二五条第三号に違反して、甲の同意を得ることなく、当該事件の相手方乙の依頼による他の事件についてその職務を行なつた場合でも、他の事件の相手方が甲以外の者であるときは、右弁護士がした乙の依頼による事件の訴訟行為は有効と解すべきである。
あてはめ
弁護士法28条は弁護士の職務の公正を確保するための規律であり、違反行為自体の効力や懲戒・刑罰の対象となるかは別問題である。本件において、弁護士が訴訟目的物である土地の売買予約を依頼者との間で締結した行為が仮に同条に違反するとしても、それは弁護士と依頼者間の取引の有効性に関わるにすぎない。訴訟手続の安定性の観点からすれば、公法上の規律違反が当然に訴訟上の代理権や訴訟行為の有効性に波及すると解すべき根拠はない。したがって、本件の訴訟委任および代理人による訴訟行為を無効と解することはできない。
結論
弁護士法28条違反の取引があっても、訴訟委任および訴訟行為は有効である。上告棄却。
実務上の射程
弁護士法上の禁止規定違反が訴訟手続に与える影響を限定的に解した判例。答案上は、代理権の欠陥を主張する相手方への反論として、実体法・取締法上の違反と訴訟法上の行為の有効性を切り離す論理として活用できる。
事件番号: 昭和34(オ)288 / 裁判年月日: 昭和35年7月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地権の承継が認められない事実関係の下では、建物買取請求権を行使することはできない。また、特段の事情がない限り、土地明渡請求が権利濫用や信義則違反に当たるとはいえない。 第1 事案の概要:上告人(被告)は本件土地上の建物を所有し、被上告人(原告)に対して建物買取請求権を主張した。しかし、原審におい…
事件番号: 昭和33(オ)1024 / 裁判年月日: 昭和35年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地所有者が土地の使用を容認していたとはいえない状況において、当該土地の明渡し等を求める請求は、特段の事情がない限り権利の濫用(民法1条3項)には当たらない。 第1 事案の概要:上告人(被告)が本件土地を使用していたところ、被上告人ら(原告)が土地所有権に基づき本訴請求(明渡し等)を提起した。上告…
事件番号: 昭和33(オ)279 / 裁判年月日: 昭和33年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の明渡請求が権利の濫用(民法1条3項)に当たるか否かは、当該請求を認めることが社会通念上著しく正当性を欠くといえるか等の事実関係を総合考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人(被告)に対し、被上告人(原告)が本件建物の明渡しを求めた事案である。原審において認定された事実関係の詳細…
事件番号: 昭和33(オ)518 / 裁判年月日: 昭和35年9月20日 / 結論: 棄却
一 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。 二 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された後、建物取得者は買取代…