根抵当の被担保債権総額が極度額を越える場合において、右極度額を提供したのみでは、当然に債務の本旨に従つた弁済の提供をなしたものということはできない。
根抵当の被担保債権総額が極度額を越える場合と債務の本旨に従つた弁済の提供
民法493条
判旨
金銭債務の弁済において、債務者が一部の提供を行ったとしても、それは債務の本旨に従った提供とはいえず、債権者がその受領を拒絶しても受領遅滞(民法413条)は成立しない。
問題の所在(論点)
金銭債務の一部のみを提供した場合において、それが「債務の本旨に従った」提供といえるか。また、債権者がその受領を拒絶したときに受領遅滞(民法413条)が成立するか。
規範
債務の本旨に従った履行の提供(民法493条本文)がなされたといえるためには、原則として債務の全部について提供されることを要する。したがって、金銭債務の一部のみの提供は、特段の事情がない限り債務の本旨に従った提供とは認められず、債権者が受領を拒絶しても受領遅滞の責任を負うことはない。
重要事実
上告人(債務者)は、被上告人(債権者)に対して金銭債務を負っていたが、その弁済にあたり、本来支払うべき金額に満たない一部の金銭のみを提供した。これに対し、被上告人はその受領を拒絶した。上告人は、この拒絶が受領遅滞にあたると主張して争った。
あてはめ
本件における上告人の提供は、負担している金銭債務の全額に及ばず、その一部に過ぎないものであった。債務の一部提供は、数量的に可分な給付であっても、合意や信義則上の特段の事情がない限り、債務の全体的な履行とは評価できない。したがって、本件提供は「債務の本旨に従ってされたもの」とはいえず、被上告人の拒絶には正当な理由があるといえる。
結論
金銭債務の一部の提供は債務の本旨に従った提供ではないため、債権者が受領を拒絶しても受領遅滞には当たらない。
実務上の射程
一部提供が受領遅滞を生じさせないという原則を確立した判例である。ただし、不足分が極めて僅少である場合や、債権者の側にあらかじめ全額の受領を拒絶する確固たる態度がある場合など、信義則上、一部提供でも有効な提供(または提供の不要)とされる例外があり得る点に注意が必要である。
事件番号: 昭和35(オ)359 / 裁判年月日: 昭和37年8月10日 / 結論: 棄却
一個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合に、右一部請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばない。