一個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合に、右一部請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばない。
一個の債権の数量的な一部請求についての判決の既判力
民訴法199条
判旨
一個の債権の数量的一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合、訴訟物は債権の一部のみであり、確定判決の既判力は残部には及ばない。
問題の所在(論点)
一個の金銭債権等の数量的分離が可能な債権について、一部であることを明示して訴えを提起した場合(一部請求)、その確定判決の既判力(民事訴訟法114条1項)は、訴えの対象外であった残部請求に及ぶか。
規範
数量的に分割可能な一個の債権の一部について、その旨を明示して訴えを提起した場合、当該訴訟の訴訟物は債権の一部に限定される。したがって、一部請求に対する確定判決の既判力は、明示された範囲を超えて残部請求に及ぶことはない。
重要事実
上告人は一個の債権の一部について判決を求める旨を明示して訴訟を提起した。これに対し、前訴の確定判決の既判力が、後訴において請求された当該債権の残部についても及ぶかどうかが争点となった。
あてはめ
本件では、上告人は一個の債権のうち一部のみを判決の対象とする意図を明示して訴えを提起している。この場合、訴訟物として裁判所の審理の対象となったのは債権の全部ではなく、明示された一部の存否に限定される。判決の既判力は訴訟物に対して生じるものであるから、審理の対象外である残部について既判力が及ぶと解することはできない。
結論
一部請求であることを明示した訴訟の確定判決の既判力は、残部請求には及ばない。したがって、残部についての後訴の提起は許される。
実務上の射程
一部請求の既判力の範囲に関するリーディングケースである。答案上は、訴訟物論との関係で「明示」の有無が重要となる。明示がない場合は債権全部が訴訟物となり既判力も全部に及ぶが、明示がある場合は一部のみに限定される(一部請求肯定説)。ただし、後訴の提起が信義則(民事訴訟法2条)に反する場合がある点には別途注意を要する。
事件番号: 平成19(受)1985 / 裁判年月日: 平成20年7月10日 / 結論: 破棄差戻
Xが,Yに対し,県が買収を予定していた土地上の樹木についてYがした仮差押命令の申立ての違法を理由として,本案訴訟の応訴等に要した弁護士費用相当額の賠償を求める前訴を提起した後に,同一の不法行為に基づき,県からの買収金の支払が遅れたことによる損害の賠償を求める後訴を提起した場合において,Xは,前訴において,上記仮差押命令…