過失相殺後の請求認容額等を考慮して定められた弁護士費用については、過失相殺による差引をすべきではない。
過失相殺後の請求認容額等を考慮して定められた弁護士費用と過失相殺
民法709条,民法722条2項
判旨
金銭債権の一部についてのみ判決を求める趣旨を明示せずに訴えを提起した場合、消滅時効中断の効力は、債権の同一性の範囲内においてその全部に及ぶ。
問題の所在(論点)
訴状において一部請求である旨を明示せずに提起された訴えによる時効中断の効力(民法147条1号、現行法147条1項1号等)が、後に拡張された残部にも及ぶか。
規範
一個の債権の一部についてのみ判決を求める趣旨を明らかにして訴えを提起した場合、時効中断の効力はその一部にのみ生じ、残部には及ばない。しかし、一部請求である旨が明示されていないときは、請求額を訴訟物たる債権の全部として訴求したものと解すべきであり、この場合には債権の同一性の範囲内においてその全部に時効中断の効力が生じる。
重要事実
被害者(被上告人)が加害者(上告人)に対し、交通事故に基づく損害賠償を請求する訴えを提起した。訴状の記載では、被った損害のうちの一部のみを請求する趣旨であることが明示されていなかった。その後、被害者は附帯控訴により請求を拡張した。加害者は、拡張された部分の損害賠償請求権について、既に時効によって消滅していると主張して時効の抗弁を提出した。
あてはめ
本件訴状の記載を検討すると、被上告人の損害賠償請求が事故による損害の一部のみを求める趣旨であることを明示したものとはいいがたい。したがって、訴訟上の請求額が債権の一部であっても、外形上は債権の全額を訴求したものと解される。その結果、訴え提起による時効中断の効力は、債権の同一性の範囲内にあるものとして、後の附帯控訴による請求拡張部分についても及んでいると評価される。
結論
一部請求である旨が明示されていない以上、時効中断の効力は債権全部に及ぶため、請求拡張部分についても時効は完成しておらず、時効の抗弁は認められない。
実務上の射程
一部請求における時効中断の範囲に関するリーディングケースである。答案上は、訴状に「一部である旨の明示」があるか否かをまず事実認定し、明示がない場合には本判例を引用して全額について時効中断を認めるべきである。反対に、明示がある場合は明示された範囲に限定されるため、請求拡張時に別途時効完成の有無を検討する必要がある。
事件番号: 昭和31(オ)388 / 裁判年月日: 昭和34年2月20日 / 結論: その他
一個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨明示して訴の提起があつた場合、訴提起による消滅時効中断の効力は、その一部の範囲においてのみ生じ残部におよばない。