二審において、全部勝訴した当事者が、判示の記載のような請求の趣旨の拡張の申立をしたときには、実質的に附帯控訴の申立をしたものと解することができる。
二審における請求の趣旨の拡張の申立が附帯控訴の申立と認められた事例
民訴法232条,民訴法372条,民訴法374条,民訴法378条
判旨
控訴審において被控訴人が「請求の趣旨の拡張」を申し立てた場合、書面の記載から第一審判決の表示や拡張部分の認容を求める趣旨が読み取れるときは、実質的に附帯控訴の提起があったと解すべきである。
問題の所在(論点)
控訴審において、全部勝訴している被控訴人が、控訴状の提出や「附帯控訴」という明示の文言を用いずに請求の趣旨を拡張した場合、これを附帯控訴の提起と解して受理することができるか。
規範
控訴審において訴えの変更(請求の趣旨の拡張)を行う場合、その変更が控訴人の不利益に変更を禁止する原則に抵触する範囲(被控訴人が自己に有利な変更を求める場合)においては、実質的に附帯控訴の提起を伴うものと解される。したがって、書面の記載内容から第一審判決の特定が可能であり、かつ請求の拡張部分を認容すべき旨の意思が表現されているときは、これを附帯控訴として適法に受理すべきである。
重要事実
第一審で全部勝訴した原告ら(被控訴人)が、被告(控訴人)による控訴の提起後、第二審の口頭弁論期日において「請求の趣旨の拡張および請求原因変更の申立書」を陳述した。同書面には事件番号が記載され、第一審判決の内容を特定することが可能であり、かつ拡張した請求額の支払いを求める旨が明記されていた。しかし、原審(東京高裁)はこれを直ちに不適法なものとして却下したため、原告らが上告した。
あてはめ
本件書面には、事件番号として第一審被告らの控訴に係る事件が明記されており、これにより第一審判決を容易に特定できる。また、請求の趣旨として「拡張した金額の支払をせよとの判決を求める」旨が具体的に記載されている。これらは実質的にみて、第一審で認容された範囲を超えてさらに有利な判決を求める附帯控訴の趣旨が表現されているものと評価できる。したがって、形式的に「請求の趣旨の拡張」と題されていても、実質的な附帯控訴として扱うのが相当である。
結論
被控訴人による請求の趣旨の拡張は、実質的に附帯控訴の提起にあたるため、原審がこれを不適法として却下したのは違法である。
実務上の射程
被控訴人が請求を拡張する場合、不利益変更禁止の原則(民訴法304条)との関係で附帯控訴が必要となるが、実務上は「訴えの変更」の形式をとることで附帯控訴の提起を包含できることを示した。答案上は、訴えの変更と附帯控訴の性質の融合を論ずる際、当事者の合理的な意思解釈を導く根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)835 / 裁判年月日: 昭和33年5月29日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】控訴期間内に提出された書面が、標記は「訴状」であっても内容から控訴状と認め得る場合は、不備があっても直ちに控訴を不適法として却下すべきではなく、補正を命じる等の適切な手続を執るべきである。 第1 事案の概要:第一審判決の正本送達(昭和30年2月7日)後、控訴期間内である同月17日に、第一審裁判所へ…