債務者が債権者の受領遅滞を理由として契約を解除することは、特段の事由のないかぎり、許されない。
債務者は債権者の受領遅滞を理由として契約を解除できるか。
民法413条,民法541条
判旨
債権者の受領遅滞は債務者の債務不履行とは性質が異なり、特段の事情がない限り、債務者は債権者の受領遅滞を理由として契約を解除することはできない。
問題の所在(論点)
債権者に受領義務が認められるか、および債権者の受領遅滞を理由に債務者が契約を解除することができるか(債権者の受領義務の成否と法定解除権の有無)。
規範
民法415条や541条(改正前等を含む)の規定は債務者の債務不履行のみを想定したものであり、受領遅滞はこれと性質を異にする。したがって、特段の事情のない限り、受領遅滞を理由とする解除権は認められず、債務者は供託や自力売却等の規定によって対処すべきである。
重要事実
上告人(債務者)が被上告人(債権者)に対し、給付の実現に協力すべき信義則上の義務があることを前提に、被上告人の不受領(受領遅滞)を理由として契約の解除を主張し、損害賠償を請求した事案。
あてはめ
債務不履行と受領遅滞は別物であり、民法が債務不履行による解除を認める一方で、受領遅滞に対しては供託等の別個の手段を用意している。本件において、被上告人に受領遅滞があるとしても、それのみで直ちに債務不履行と同視して解除を認めることは民法の予定していないところである。また、受領義務を認めるべき「特段の事情」も認められない。
結論
債権者に受領義務はなく、受領遅滞を理由とする契約解除は認められない。
実務上の射程
受領遅滞が直ちに法定解除の原因にならないという原則(法定責任説的構成)を示す。ただし、判旨が「特段の事由の認められない本件において」と付言している点から、信義則上、受領が契約の目的達成に不可欠な場合等には、受領義務違反を理由とする解除が認められる余地を残している。
事件番号: 昭和28(オ)155 / 裁判年月日: 昭和34年8月28日 / 結論: 棄却
高圧バルブ口金一〇万個を毎月三万個づつ製作して乙に売り渡す契約をした甲が、納期が全部経過した後、製品三万個だけの引渡の準備をなし、その受領と代金の支払を催告し、これに応じないことを停止条件として契約全部を解除する意思表示をした場合であつても、乙が予め右製品の受領を拒み契約履行の意思のないことを表明していた等、後記判示の…