貸金の遅延損害金を日歩一〇〇円につき三〇銭と約定したからといつて、直ちに右約定が公序良俗に反するとはいえない。
貸金の遅延損害金の約定が公序良俗に反しないとされた事例。
民法90条,民法420条
判旨
貸金債務の連帯保証契約につき、表見代理の成立要件である「正当な理由」の存否は、相手方が無権代理人に代理権があると信じたことについて過失がないかという観点から判断される。また、貸金の遅延損害金を日歩100円につき30銭(年約109.5%)とする約定は、直ちに公序良俗に反し無効とはいえない。
問題の所在(論点)
1. 無権代理人による連帯保証契約の締結について、相手方が代理権があると信じたことに「正当な理由」が認められるか。 2. 日歩100円につき30銭という高率の遅延損害金約定が、民法90条の公序良俗に反するか。
規範
1. 表見代理(民法110条等)における「正当な理由」とは、相手方が代理権の存在を信じたことについて、客観的な状況に照らして過失がないことをいう。 2. 利息制限法等の制限に直接抵触しない限り、遅延損害金の利率が高利であっても、それのみをもって直ちに民法90条の公序良俗違反として無効とされるものではない。
重要事実
上告人(本人)に対し、被上告人(相手方)が連帯保証債務の履行を求めた事案。訴外Dが、上告人の代理権がないにもかかわらず上告人を代理して被上告人との間で連帯保証契約を締結した。この際、被上告人はDに代理権があると信じていた。また、当該契約には遅延損害金を日歩100円につき30銭とする約定が含まれていた。原審は、Dに代理権があると信じたことについて「正当な理由」を認め、また遅延損害金の約定も公序良俗に反しないとして、上告人の責任を認めた。
あてはめ
1. 本件において、被上告人がDに代理権があると信じたことについては、原審の確定した事実関係(詳細は判決文からは不明)に照らせば、代理権を信じるに足りる客観的事由が存在し、過失がないといえるため、正当な理由が認められる。 2. 遅延損害金の利率については、日歩100円につき30銭(年利換算で約109.5%)という事実は認められるものの、判例の趣旨(昭和32年9月5日判決等)に照らせば、この利率の高さのみをもって直ちに社会秩序に反するほど不当なものとは断定できない。
結論
1. 正当な理由が認められるため、表見代理が成立し、上告人は連帯保証債務を負う。 2. 遅延損害金の約定は公序良俗に反せず有効である。したがって、上告人の上告は棄却される。
実務上の射程
表見代理の「正当な理由」のあてはめにおいて、本判決は原審の判断を是認するにとどまるが、結論として本人側の帰責性と相手方の信頼の保護を天秤にかけている。遅延損害金については、現代では利息制限法の修正(4条、7条等)により同法の範囲内で規律されるため、公序良俗違反(90条)を直接検討する前に同法の適用を確認すべきである。
事件番号: 昭和40(オ)1325 / 裁判年月日: 昭和41年10月11日 / 結論: 棄却
(省略)