目的物件の所有者は、その目的物件を現在の賃料額よりも高額で第三者に賃貸できるような場合には、その高額の賃料額相当の損害金を不法占有者に対し請求できる。
目的物件の所有者は現在の賃料額より高額の賃料相当損害金の支払を請求できるか。
民法601条,民法709条
判旨
賃貸借契約解除後の不法占有による損害賠償額は、約定賃料が低額であり、第三者にそれ以上の高額で賃貸し得る事情がある場合には、その客観的な賃料相当額を基準とすることができる。
問題の所在(論点)
賃貸借契約が解除された後の不法占有に基づく損害賠償(民法709条)において、損害額の算定基準を従前の約定賃料に限定すべきか、あるいはそれを超える客観的な賃料相当額とすることができるか。
規範
賃貸借契約の解除後に賃借人が目的物を不法占有した場合の損害賠償額は、原則として従前の約定賃料相当額とされるが、従前の賃料が他に比して低額である等の事情により、当該物件をより高額で第三者に賃貸し得る場合には、その客観的に得られたであろう高額の賃料相当額を損害として請求し得る。
重要事実
土地所有者である被上告人は、上告人との間で土地賃貸借契約を締結していたが、上告人による無断転貸を理由に契約を適法に解除した。解除後も上告人が本件建物を取り壊さず土地を占有し続けたため、被上告人は建物収去土地明渡とともに、解除後の土地占有について損害賠償を請求した。この際、請求された損害金の額(月坪17円)は従前の約定賃料を上回っていたが、地代家賃統制令の限度額の範囲内であった。
事件番号: 昭和33(オ)506 / 裁判年月日: 昭和33年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が賃貸人の承諾なく土地を転貸した場合、賃貸人は民法612条2項に基づく解除権を行使せずとも、所有権に基づき無断転借人に対して直接土地の明け渡しを請求できる。 第1 事案の概要:地主Dと借地人Eとの間には、転貸借を禁止する特段の約定が存在した。しかし、EはDの承諾を得ることなく本件土地を第三者…
あてはめ
本件土地は大都会に所在し、地代家賃統制令所定の限度額内であれば容易に第三者に賃貸し得ることが明らかである。従前の約定賃料が低額であったとしても、解除後の不法占有によって賃貸人が失った利益は、第三者に賃貸して得られたはずの客観的な賃料額(本件では月坪17円)であると評価できる。したがって、約定賃料を超える額を請求しても違法ではない。
結論
賃貸人は、不法占有者に対し、従前の約定賃料額にかかわらず、客観的に第三者へ賃貸可能な高額の賃料相当額を損害金として請求できる。
実務上の射程
契約解除後の損害賠償請求において、約定賃料が市場価格より著しく低廉な場合に、実損害としての客観的賃料額を立証して高額の請求を行う際の根拠となる。ただし、現在では「約定賃料の2倍」といった違約金条項がある場合が多いが、条項がない場合の損害算定の指針として重要である。
事件番号: 昭和39(オ)1308 / 裁判年月日: 昭和40年7月23日 / 結論: 棄却
本訴請求は、建物所有者に収去義務の現存する建物の占有者に対し該建物からの退去を求める趣旨と解せられるから、右占有者が右建物の占有関係を離れてその敷地そのものの占有権原を主張しても、抗弁となりえない。
事件番号: 昭和38(オ)604 / 裁判年月日: 昭和40年1月12日 / 結論: 棄却
無断転借人が建物を建築した場合には、右建物について買取請求権は生じない。
事件番号: 昭和38(オ)1462 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
賃貸人たる地主は、借地人に対し賃料請求権を有するとしても、いまだ借地人から右賃料の支払を受けていないかぎり、借地権の無断譲受人に対し賃料相当の損害賠償請求ができる。
事件番号: 昭和33(オ)518 / 裁判年月日: 昭和35年9月20日 / 結論: 棄却
一 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。 二 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された後、建物取得者は買取代…