一 不動産買受人甲が売渡人乙に対し所有権移転登記手続履践の請求訴訟を起こし、甲勝訴の判決が確定した場合において、乙から同一不動産の二重譲渡を受けた丙が、右訴の事実審の口頭弁論終結後にその所有権移転登記を経たとしても、丙は、前示確定判決について、民訴法第二〇一条第一項の承継人にあたらない。 二 登記義務者の登記申請意思の陳述を求める請求を認容する判決に誤つて仮執行宣言が付せられ、右仮執行宣言付判決に基づいて登記がなされた場合でも、右判決が確定した後は、右登記を有効と解して妨げない。
一 移転登記請求訴訟の被告から二重譲渡を受けた者は民訴法第二〇一条の承継人にあたるか 二 仮執行宣言付判決に基づく登記の効力
民訴法201条,民法177条,不動産登記法25条
判旨
判決の確定前に仮執行宣言に基づき経られた所有権移転登記であっても、その後判決が確定すれば、登記義務者の意思表示が擬制され、当該登記の瑕疵は治癒され有効となる。また、前訴の理由中の判断には既判力が及ばないため、二重売買の優劣は登記の具備により決せられる。
問題の所在(論点)
1. 判決確定前に仮執行宣言に基づいてなされた登記は、判決確定により有効となるか(登記の瑕疵の治癒)。2. 前訴の理由中で示された「所有権を主張し得ない」との判断に既判力は生じるか。3. 二重譲受人の一方が勝訴判決を得た場合、他方の譲受人は「承継人」(民訴法115条1項3号)にあたるか。
規範
1. 判決の確定により登記義務者の意思表示が擬制される場合(不動産登記法旧21条、民行法類推)、判決確定前にされた先行登記であっても、その後に判決が確定したときは、登記義務者の意思に合致するに至り、その瑕疵は治癒されて有効な登記となる。2. 確定判決の既判力は主文に包含されるものに限り生じ、判決理由中において示された物権の帰属等の判断については生じない。
重要事実
事件番号: 昭和36(オ)1219 / 裁判年月日: 昭和37年12月18日 / 結論: 棄却
権利取得が仮処分登記前であつても、権利取得登記が仮処分登記後になされたときは、権利取得者は、右権利取得を以て仮処分債権者に対抗し得ない。
不動産の二重譲渡が生じ、譲受人A(上告人)が譲渡人Eに対し移転登記請求訴訟を提起して勝訴確定判決を得た。一方、別の譲受人DはEに対し移転登記請求訴訟を提起し、仮執行宣言付判決に基づき、判決確定前に移転登記を経た。その直後、Dの勝訴判決が確定した。その後、Dから被上告人に対し所有権が移転し、登記も経られた。Aは、被上告人がA・E間の確定判決の口頭弁論終結後の承継人であること、および別件訴訟の理由中で被上告人の所有権が否定されたこと等を根拠に、自己の権利を主張した。
あてはめ
1. Dが経た登記は、登記当時は判決確定前であり形式上は違法であった。しかし、その直後にDの勝訴判決が確定したことで、登記義務者Eの登記申請の意思が表示された(擬制された)こととなる。したがって、当該登記は実体的な登記義務者の意思に合致するに至り、有効な登記として治癒される。2. 前訴である明渡請求事件の判決理由中で「被上告人は所有権を主張し得ない」と判断されていても、それは主文の判断ではないため既判力は生じない。3. 本件は不動産の二重売買であり、AとD(および転得者)は対抗関係に立つ。一方が勝訴判決を得ても他方は「承継人」には該当せず、対抗問題(民法177条)として登記の先後で決すべきである。
結論
Dが先に有効な登記を備えた以上、Dから譲り受けた被上告人はAに対して所有権取得を対抗できる。Aの上告は棄却される。
実務上の射程
登記手続を命ずる判決は、確定時に意思表示が擬制される(民執法174条)。本判例は、実務上、先行する無効登記であっても後に実体関係と登記義務者の意思(擬制)が具備されれば有効となるという「実体合致の原則」の一場面を示す。また、理由中の判断に既判力を認めない原則的な立場を再確認する際や、二重譲渡の譲受人相互が承継人関係に立たないことを説明する際に活用できる。
事件番号: 昭和41(オ)1234 / 裁判年月日: 昭和44年12月19日 / 結論: 棄却
不動産の買主がその売主に対してなしたいわゆる処分禁止の仮処分がある場合に、右不動産の他の買主が同一不動産について第二次の処分禁止の仮処分をすることは妨げられないが、第一次仮処分の債権者が、被保全権利の実現として、右売買契約に基づく所有権移転登記を経由したときは、第二次仮処分の債権者は、自己の仮処分の効力を主張して右所有…
事件番号: 昭和31(オ)919 / 裁判年月日: 昭和32年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の二重贈与において、第二の受贈者が第一の贈与の事実を知っていた(悪意であった)としても、それだけで直ちに公序良俗に反する等の特段の事情がない限り、先に登記を備えた第二受贈者が優先して所有権を取得する。 第1 事案の概要:贈与者B1は、土地を上告人Aに贈与し、その引渡しを完了したが、所有権移転…
事件番号: 昭和39(オ)919 / 裁判年月日: 昭和40年3月11日 / 結論: 棄却
不動産を目的とする代物弁済の予約完結の意思表示がなされたときは、これにより、該不動産の所有権移転の効果が生ずるものと解すべきである。
事件番号: 昭和39(オ)1368 / 裁判年月日: 昭和40年12月3日 / 結論: 棄却
代物弁済の予約をした債権者が、その妻名義で所有権移転請求権保全の仮登記をしたときは、その仮登記は順位保全の効力を有しない。