代物弁済の予約をした債権者が、その妻名義で所有権移転請求権保全の仮登記をしたときは、その仮登記は順位保全の効力を有しない。
実体関係に符合しないものとして仮登記が無効とされた事例。
民法177条,不動産登記法7条2項
判旨
実体関係に符合しない仮登記は、たとえ当事者間において予約完結の意思表示が有効になされたとしても、第三者に対して順位保全の効力を有しない。
問題の所在(論点)
実体関係に符合しない仮登記がある場合において、その後に代物弁済予約完結の意思表示が有効になされたとしても、当該仮登記に基づき第三者に対して順位保全の効力を主張できるか。
規範
不動産登記法上の仮登記が順位保全的効力(対抗力)を有するためには、当該仮登記が実体法上の権利関係と符合していることを要する。実体関係に符合しない仮登記は無効であり、その後に予約完結権が行使されたとしても、仮登記時点に遡って第三者に対抗することはできない。
重要事実
上告人は、岩沢との間で代物弁済予約を締結し、これに基づく仮登記を経由していた。その後、上告人は岩沢に対して予約完結の意思表示を行った。しかし、当該仮登記はそもそも実体関係に符合しないものであったため、原審は順位保全の効力を否定した。これに対し上告人は、予約完結の意思表示が有効である以上、仮登記も有効であると主張して上告した。
事件番号: 昭和38(オ)1108 / 裁判年月日: 昭和40年4月6日 / 結論: 棄却
土地を目的とする代物弁済予約に基づく完結権を行使しうる時から約一五年後に完結の意思表示がなされた場合でも、右予約による所有権移転請求権保全の仮登記が経由されているときは、他に特段の事情のないかぎり、いわゆる権利失効の原則により権利が失われることなく、右完結権の行使は有効である。
あてはめ
本件における仮登記は、登記がなされた時点で実体関係に符合していなかった。上告人は予約完結の意思表示が有効であることを根拠に仮登記の有効性を主張するが、仮登記そのものが実体法上の基礎を欠く以上、登記の流用や無効な登記の追認としての要件を検討するまでもなく、第三者に対する関係では順位保全の効力を認められない。予約完結の意思表示の有効性と、登記の対抗力の有無は別個の判断事項である。
結論
実体関係に符合しない仮登記は無効であり、第三者に対して順位保全の効力を有しない。したがって、上告人の主張は認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
仮登記の流用や実体との不一致が争点となる場面で、登記の公信力が否定される現行法下における「実体符合の原則」を再確認する素材として用いる。物権変動の有効性と対抗要件の有効性を分けて論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和39(オ)1367 / 裁判年月日: 昭和40年12月3日 / 結論: 棄却
一 債権担保の機能を営む代物弁済の予約がされた後、被担保債権の一部が弁済されても、反対の特約または権利の濫用と認められるような特段の事由がないかぎり、当該予約完結権の行使は妨げられない。 二 前項の場合において、予約完結権を行使した債権者は、特段の事情がないかぎり、一部弁済としてすでに受領した金員を債務者に返還する義務…
事件番号: 昭和39(オ)919 / 裁判年月日: 昭和40年3月11日 / 結論: 棄却
不動産を目的とする代物弁済の予約完結の意思表示がなされたときは、これにより、該不動産の所有権移転の効果が生ずるものと解すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)1319 / 裁判年月日: 昭和41年6月2日 / 結論: 棄却
一 不動産買受人甲が売渡人乙に対し所有権移転登記手続履践の請求訴訟を起こし、甲勝訴の判決が確定した場合において、乙から同一不動産の二重譲渡を受けた丙が、右訴の事実審の口頭弁論終結後にその所有権移転登記を経たとしても、丙は、前示確定判決について、民訴法第二〇一条第一項の承継人にあたらない。 二 登記義務者の登記申請意思の…