相互銀行法第四条は、主として行政取締の必要上免許を得ないで右業務を営むことを禁止し、行政上の監督の適正を期するとともに、これにより信用の維持と加入者の保護をはかろうとするにあるのであるから、右規定に違反する行為自体は無効でない。
相互銀行法第四条違反の行為の効力
相互銀行法4条
判旨
相互銀行法に違反する無免許営業は、取締規定であり私法上の効力を妨げるものではなく、また、代物弁済予約後の債務の一部履行は、特段の事由がない限り予約完結権の行使を妨げない。
問題の所在(論点)
1. 相互銀行法上の無免許営業禁止規定(取締規定)に抵触する行為の私法上の効力。 2. 代物弁済予約の成立後に債務の一部弁済がなされた場合、予約完結権の行使は制限されるか。
規範
1. 相互銀行法等の取締法規に違反する行為であっても、法の趣旨が主として行政上の監督の適正や信用の維持にある場合は、私法上の効力は否定されない。 2. 代物弁済予約の成立後に債務の一部弁済がなされた場合、①反対の特約があるか、②既払分が相当額に達し、予約完結を認めることが信義則に照らし不当と認められる特段の事由がない限り、予約完結権の行使は有効である。この場合、債権者は受領済みの金員を返還する義務を負う。
重要事実
上告人と、被上告人らの先代との間で、相互銀行法上の免許を持たずに同法所定の業務に該当する取引が行われ、その一環として債務不履行時の代物弁済予約が締結された。予約成立後、上告人(債務者)は債務の一部を弁済したが、被上告人ら(債権者側)は予約完結権を行使し、目的物の所有権移転を主張した。上告人は、無免許営業の違法性による契約の無効や、一部弁済による予約完結権行使の制限を争った。
あてはめ
1. 相互銀行法の規定は行政上の監督の適正や信用の維持を目的とする行政取締法規であり、これに違反する業務行為であっても私法上の効力まで無効とするものではないため、本件契約は有効である。 2. 本件では一部弁済がなされているが、反対の特約の存在や、既払分が相当額に達し予約完結権行使を不当とするような特段の事由は認められない。したがって、債権者側の予約完結権の行使は有効であり、債権者は単に既受領分を返還する義務を負うに留まる。
結論
本件代物弁済予約完結の意思表示は有効であり、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
1. 取締規定と効力規定の区別において、行政上の監督を主眼とする場合は私法上の効力を維持する判例法理として活用できる。2. 譲渡担保や代物弁済予約において、一部弁済があったとしても清算処理の問題として構成し、予約行使自体の効力は否定しない実務の指針となる。
事件番号: 昭和32(オ)981 / 裁判年月日: 昭和34年7月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買予約完結権の行使が信義則に反するか否かは、予約の目的物の範囲や時価評価、権利行使に至る経緯等の具体的事実に基づき判断される。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間で本件家屋等の売買予約が締結された。その後、被上告人が予約完結権を行使したが、上告人は当該予約が目的物の範囲において不明確である…