判旨
売買予約完結権の行使が信義則に反するか否かは、予約の目的物の範囲や時価評価、権利行使に至る経緯等の具体的事実に基づき判断される。
問題の所在(論点)
売買予約完結権の行使が信義則に反し許されないとされるための要件、および目的物の特定の程度が問題となる。
規範
売買予約完結権の行使が権利の濫用ないし信義則(民法1条2項)に反するか否かは、予約の目的物の特定性、予約時及び行使時の時価と予約完結による対価の均衡、権利行使の目的および経緯等を総合的に考慮して判断する。
重要事実
上告人と被上告人との間で本件家屋等の売買予約が締結された。その後、被上告人が予約完結権を行使したが、上告人は当該予約が目的物の範囲において不明確であること、また、鑑定人による評価額に比して不当な権利行使であり信義則に反すること等を理由に、その効力を争った。
あてはめ
本件において、売買予約の目的物の範囲については証拠上明確に特定されており、不明確な点は存在しない。また、鑑定人による家屋の評価額を時価と認めることに不合理はなく、当該価格を前提とした権利行使が不当に均衡を欠くものとはいえない。したがって、認定された事実関係の下では、本件予約完結権の行使が信義則に反するものとは認められない。
結論
本件売買予約完結権の行使は適法であり、信義則に反しない。
実務上の射程
予約完結権の行使に関する信義則適用の限界を示した事例判断である。答案上は、予約完結権が形成権であるとしても、その行使が著しく不当な結果を招く場合には信義則による制約があり得ることを前提としつつ、本件のように目的物が特定され、対価が時価に照らして妥当であればその行使は肯定されるという論理で使用する。
事件番号: 昭和32(オ)860 / 裁判年月日: 昭和34年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃料の延滞を理由とする賃貸借契約の解除が認められる場合において、供託が有効であると認められない事実関係の下では、解除は信義則違反や権利濫用には当たらない。 第1 事案の概要:賃借人(上告人)は、賃料の支払いに代えて供託を行ったが、原審においてその供託は無効であると判断された。賃貸人(被上告人)は、…