原判決のいかなる判断が憲法の条項のいかなる点に違反するか具体的に示さない場合は、特別上告理由として不適法である。
違憲の主張が具体性を欠き特別上告が不適法とされた事例
民訴法409条ノ2
判旨
刑事裁判で有罪と認定された行為について、民事裁判でこれと異なる事実を認定することは憲法76条に違反しない。
問題の所在(論点)
民事上の責任を究明するに際し、既に刑事判決で有罪とされた行為について、これと異なる事実認定をすることが憲法76条に違反するか。
規範
憲法76条は、司法権の所属、裁判所の構成、裁判官の職責を規定したものであり、刑事判決で有罪とされた行為について民事裁判において異なる事実認定を行うことを禁止するものではない。民事裁判における事実認定は裁判所の独立した判断に委ねられる。
重要事実
刑事裁判において有罪判決を受けた被告人に対し、民事上の責任を追及する訴えが提起された。上告人は、刑事判決の認定事実と異なる事実認定を民事裁判で行うことは、裁判官の職責等を定めた憲法76条等に違反すると主張して上告した。
あてはめ
事件番号: 昭和33(テ)7 / 裁判年月日: 昭和35年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法は、81条の規定を除き、審級制度を立法政策に委ねており、上告理由を制限する民訴法の規定は憲法32条に違反しない。また、判決原本への署名捺印が転補前になされていれば、判決手続きは適法である。 第1 事案の概要:上告人は、民事訴訟法393条3項(旧法)が憲法32条に違反すると主張した。また、原審の…
憲法76条は司法権の主体や裁判所の組織等を定めた規定である。民事裁判において、民事責任の有無を判断する過程で刑事判決の拘束を受けずに独立して事実を認定することは、同条が想定する司法権の行使の態様として許容される。したがって、刑事判決の事実認定と異なる判断をすることが直ちに憲法違反となるわけではない。
結論
民事裁判において刑事判決と異なる事実認定をすることは、憲法76条に違反しない。
実務上の射程
刑事裁判の認定事実に民事裁判が拘束されないという「事実認定の独立性」を確認した判例である。答案上は、刑事記録の証拠価値(民事訴訟法における自由心証主義)を論じる際の前提として、憲法上の制約が存在しないことを示す根拠として活用できる。
事件番号: 昭和57(テ)11 / 裁判年月日: 昭和57年5月27日 / 結論: 棄却
民訴法四〇九条ノ二の規定及び民訴規則五九条によつて特別上告事件の訴訟手続に準用される民訴規則四六条ないし四九条の規定は、憲法三二条に違反しない。
事件番号: 昭和36(テ)25 / 裁判年月日: 昭和36年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条は裁判を受ける権利を規定するが、裁判所の組織、権限、審級等の具体的制度は法律による立法政策の問題である。したがって、仮差押や仮処分に関する判決について通常の上告を認めない民事訴訟法の規定は同条に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、仮差押または仮処分に関してなされた判決に対し、通常の…
事件番号: 昭和30(テ)14 / 裁判年月日: 昭和32年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法上、裁判所の裁判権(上告審の範囲等)に関する事項は、憲法81条の規定を除き、立法府の広範な裁量に委ねられた立法政策の問題である。したがって、仮処分に関する判決に対して通常の上告を認めない民事訴訟法の規定は、憲法32条等に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、仮処分に関する判決に対し通常の上…