判旨
憲法上、裁判所の裁判権(上告審の範囲等)に関する事項は、憲法81条の規定を除き、立法府の広範な裁量に委ねられた立法政策の問題である。したがって、仮処分に関する判決に対して通常の上告を認めない民事訴訟法の規定は、憲法32条等に違反しない。
問題の所在(論点)
仮処分に関する判決について通常の上告を認めないとする民事訴訟法の規定は、裁判を受ける権利(憲法32条)や憲法81条に違反し、憲法上保障されるべき裁判権を不当に制限するものか。
規範
裁判所の裁判権(上告の可否や範囲)の決定は、憲法81条(違憲審査権)に係る事項を除き、原則として法律によって決定されるべき立法政策の問題である。裁判を受ける権利(憲法32条)を保障しつつも、審級の構成や上告の制限をどのように定めるかは立法府の裁量に委ねられている。
重要事実
上告人は、仮処分に関する判決に対し通常の上告を提起した。これに対し、当時の民事訴訟法393条3項(現行の制度体系下での上告制限に相当)が仮処分判決に対する通常上告を認めていなかったため、当該規定が憲法32条(裁判を受ける権利)や憲法81条等に違反し、無効ではないかが争われた。
あてはめ
憲法81条が規定する最高裁判所の終局的な違憲審査権を害しない限りにおいて、どのような手続で裁判を完結させるかは立法政策に属する。本件における仮処分の不服申立てに関する制限は、迅速な権利保全を目的とする仮処分手続の性質に鑑みた合理的な立法判断の範囲内といえる。したがって、通常上告を認めない規定が直ちに裁判を受ける権利の核心を侵害するものとは解されない。
結論
仮処分判決に対する上告制限規定は、立法政策の範囲内であり、憲法32条および81条に違反しない。
実務上の射程
事件番号: 昭和57(テ)11 / 裁判年月日: 昭和57年5月27日 / 結論: 棄却
民訴法四〇九条ノ二の規定及び民訴規則五九条によつて特別上告事件の訴訟手続に準用される民訴規則四六条ないし四九条の規定は、憲法三二条に違反しない。
司法試験においては、審級定立権(審級制度の設計)が立法府の広範な裁量に委ねられていることを示す根拠として活用できる。特に、民事・刑事訴訟における上告理由の制限や、上告受理制度の合憲性を論じる際の理論的基礎となる判例である。
事件番号: 昭和33(テ)7 / 裁判年月日: 昭和35年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法は、81条の規定を除き、審級制度を立法政策に委ねており、上告理由を制限する民訴法の規定は憲法32条に違反しない。また、判決原本への署名捺印が転補前になされていれば、判決手続きは適法である。 第1 事案の概要:上告人は、民事訴訟法393条3項(旧法)が憲法32条に違反すると主張した。また、原審の…
事件番号: 昭和36(テ)25 / 裁判年月日: 昭和36年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条は裁判を受ける権利を規定するが、裁判所の組織、権限、審級等の具体的制度は法律による立法政策の問題である。したがって、仮差押や仮処分に関する判決について通常の上告を認めない民事訴訟法の規定は同条に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、仮差押または仮処分に関してなされた判決に対し、通常の…