賃貸家屋明渡を求める調停の申立がなされたときは、特別の事情の認められない限り、これによつて家屋賃貸借の解約の申入れの意思表示がなされたものと解するものを相当とする。
家屋明渡を求める調停の申立は賃貸借解約の申入れとなるか
借家法1条の2,借家法3条
判旨
家屋の明渡を求める調停の申立は、賃貸借契約の存続とは相容れないものであるため、特段の事情がない限り、申立理由の如何を問わず解約申入れの意思表示が含まれると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
家屋の明渡しを求める調停の申立てによって、賃貸借契約の解約申入れの意思表示がなされたと認めることができるか。
規範
建物賃貸借における解約申入れ(借地借家法27条1項、旧借家法3条等)の意思表示は、必ずしも明示的なものに限られない。家屋の明渡を求める調停の申立ては、客観的に賃貸借契約の終了を前提とする行為であり、特段の事情がない限り、申立ての理由の如何にかかわらず、その申立書が賃借人に到達した時点で解約申入れの意思表示がなされたものと解する。
重要事実
賃貸人(被上告人)は賃借人(上告人)に対し、家屋の明渡しを求めて調停を申し立てた。当該調停申立書は賃借人に受領されたが、賃借人の承諾が得られなかったため調停自体は不成立に終わった。その後、賃貸人が解約申入れの効力を主張したのに対し、賃借人は調停申立書の文言等を理由に、有効な解約申入れがなされていないと争った。
あてはめ
家屋の明渡しを求めるという行為は、賃貸借契約の継続を否定する意思を外部に表明するものである。本件における調停の申立ては、家屋の明渡しを目的とするものであり、これは賃貸借の存続とは相容れない性質を持つ。したがって、特段の事情が認められない本件においては、調停申立書の記載内容や理由の如何にかかわらず、当該申立書が賃借人に受領されたことをもって、解約申入れの意思表示が到達したものと評価するのが相当である。
結論
家屋明渡請求の調停申立てにより、解約申入れの意思表示があったものと認められる。当該申立書が相手方に到達した時点において、解約申入れの効力が発生する。
実務上の射程
意思表示の解釈に関する判例であり、特に明示的な解約通知を欠く場合に、調停申立書や訴状等の送達をもって解約申入れ(あるいは更新拒絶)の通知に代えることができるとする実務上重要な射程を持つ。答案上は、借地借家法上の解約申入れの有無が問題となる場面で、明示の通知がない場合の黙示の意思表示の有無を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)567 / 裁判年月日: 昭和37年1月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物賃貸借の解約申入れにおける正当事由の存否は、諸般の事実関係を総合的に考慮して判断されるべきであり、また造作買取請求権の対象となる「造作」に該当するか否かは、当該目的物の性質や取引の実態に基づき個別に判断される。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)が賃借人(上告人)に対し、昭和25年3月27日…