判旨
賃貸人による家屋明渡の調停申立ては、その申立ての趣旨を相手方が了知したと認められる場合には、解約申入れの意思表示としての効力を有する。
問題の所在(論点)
家屋明渡を求める調停の申立ては、賃貸借契約の解約申入れ(旧借家法1条の2)としての効力を有するか。また、その効力発生のためには申立書の「送達」まで必要か、相手方の「了知」で足りるか。
規範
建物賃貸借における解約の申入れ(借地借家法27条1項、旧借家法1条の2)について、明示的な書面による必要はなく、裁判所に対する明渡調停の申立てであっても、その申立ての趣旨を相手方が了知し得る状態に至れば、解約申入れとしての効力が生じる。
重要事実
賃貸人(被上告人)は、賃借人(上告人)に対し内容証明郵便で家屋明渡を催告したが、賃借人がこれに応じなかった。そのため、賃貸人は裁判所に対し家屋明渡を求める調停を申し立てた。賃借人は、当該内容証明郵便を受領したこと、および本件家屋明渡に関し両者間で調停が行われた事実を認めたが、調停申立書が正式に送達されたことまでは判示されていないとして、解約申入れの効力を争った。
あてはめ
本件では、賃貸人による調停申立てが、既になされた内容証明郵便による明渡催告と密接に関連して行われている。このような調停の申立ては、その実質において解約申入れと選ぶところがないため、黙示的な解約申入れの主張が含まれていると解される。また、実際に当事者間で調停が行われている以上、賃借人において賃貸人の明渡請求の趣旨を了知したものと認められる。したがって、厳格な送達の有無にかかわらず、解約申入れの効力が発生したと解するのが相当である。
結論
家屋明渡の調停申立ては、相手方がその趣旨を了知したと解される以上、解約申入れとしての効力を有する。
実務上の射程
賃貸借終了を基礎づける解約申入れの意思表示の有無が争点となる事案で、明示的な申入れを欠く場合に「調停申立て」や「訴訟提起」を意思表示の代用として構成する際の根拠となる。答案上は、意思表示の到達(民法97条1項)を柔軟に捉える文脈で活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)334 / 裁判年月日: 昭和32年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の賃貸借において、賃貸人が解約の申入れをする際に必要とされる正当事由(旧借家法1条の2)の有無は、諸般の事情を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)と被上告人(賃貸人)との間の建物賃貸借契約において、被上告人が解約の申入れを行った。上告人は、当該解約申入れには正当事由…