調停申立が取り下げられても、その調停申立による催告の効力は当然には消滅しない。
調停申立の取下と調停申立による催告の効力。
民法541条
判旨
賃料支払督促を目的とした調停申立てが取下げにより終了した場合であっても、当該申立てによりなされた催告の効力は当然には消滅せず、契約解除の前提となる催告として有効である。
問題の所在(論点)
民法541条の解除権行使の前提となる催告について、調停申立ての形で行われた催告が、その後の調停取下げによって失効するか否か。
規範
民法541条に基づく解除の要件たる催告は、債務者に対して債務の履行を請求する意思の通知であれば足りる。調停手続内での申立てであっても、そこに履行を求める意思が明確に示されている以上、調停の取下げという手続上の終了原因によって、実体法上の催告としての効力が遡及的に失われるものではない。
重要事実
賃貸人(被上告人)が賃借人(上告人)に対し、延滞賃料の支払を求めて調停を申し立てた。その後、当該調停は取下げにより終了したが、賃貸人は調停終了後から解除の意思表示までの間、第三者を介して再三にわたり延滞賃料の支払を催告していた。賃借人側は、調停取下げにより当初の催告の効力が消滅したため、催告を欠く解除であり無効であると主張して争った。
あてはめ
本件では、調停申立てという形式によって延滞賃料支払の催告がなされている。調停が取下げによって終了したとしても、それは手続上の終了を意味するに過ぎず、賃貸人が賃料支払を求めたという実体法上の意思表示の事実を消滅させる理由にはならない。さらに、本件では調停終了後も解除に至るまで継続的に履行の請求がなされており、これらを総合すれば、解除に先立ち有効な催告がなされたと評価できる。
結論
調停の取下げによって催告の効力は消滅しないため、当該催告に基づく賃貸借契約の解除は有効である。
実務上の射程
訴訟上の請求や調停申立てに含まれる意思表示の「実体法上の効力」を認める法理として、時効中断(更新)の規定とは区別して整理すべき事案である。答案上では、手続が不適法や取下げで終わった場合でも、催告(意思の通知)としての事実上の効果は残存することを論証する際に活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)1055 / 裁判年月日: 昭和34年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】調停の内容をなす契約関係において債務不履行がある場合、調停という形式をとっていても、相手方は当該契約を解除することができる。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の間には、建物の明渡しと借入金債務の分割払いに関する調停条項が成立していた。この内容は、上告人が分割払いの履行を完了すれば建物の所有権が上…