判旨
建物賃貸借における解約の申入れについて、訴状の送達等による訴えの提起をもって解約申入れの効力を認めることができる。また、これを裁判所が認めることは当事者の主張しない事項につき判断したことにはならない。
問題の所在(論点)
賃貸借終了の根拠として特定の日付の解約申入れが主張されている場合に、裁判所が「訴えの提起」を新たな解約申入れと認めて判断の基礎とすることは、当事者の主張しない事項につき判断したことになるか。
規範
建物賃貸借契約の終了を求める訴訟において、訴状等の送達による「訴えの提起」には、実体法上の解約申入れとしての効力を認めることができる。また、裁判所が訴えの提起を解約申入れと認定することは、当事者の合理的意思解釈の範囲内であり、処分権主義(民事訴訟法146条、現246条)等に抵触するものではない。
重要事実
賃貸人(被上告人)が、賃借人(上告人)に対し、昭和23年11月15日付の内容証明郵便による解約申入れを根拠に建物明け渡しを求めて提訴した。原審は、当該郵便による解約申入れについては正当事由を欠き無効であるとしたが、その後の「訴えの提起」自体に解約申入れの効力を認め、正当事由の有無を判断した。これに対し上告人は、訴えの提起を解約申入れと認めることは当事者が主張していない事項を判断するものである等と主張して争った。
あてはめ
賃貸人が建物の明け渡しを求めて訴えを提起する行為には、通常、当該時点において賃貸借契約を終了させるという解約の意思表示が含まれていると解するのが当事者の合理的意思に合致する。本件においても、従前の内容証明郵便による解約申入れが無効であったとしても、その後に提起された訴訟を通じて解約の意思は明確に示されている。したがって、これを解約申入れの効力発生の基礎としても、弁論主義や処分権主義に反する違法はないといえる。
結論
訴えの提起に解約申入れの効力を認めることは可能であり、裁判所がこれを認定することは当事者の主張しない事項を判断したことにはならない。
実務上の射程
借地借家法(旧借家法)上の解約申入れや更新拒絶の事案で、通知が先行している場合であっても、訴状の送達時を基準に正当事由や期間経過を再構成する際に活用される。実務上、先行する通知に不備がある場合の予備的・補充的な主張として「訴状の送達をもって解約申入れとする」構成を裏付ける射程を有する。
事件番号: 昭和31(オ)1040 / 裁判年月日: 昭和34年1月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸人による家屋明渡の調停申立ては、その申立ての趣旨を相手方が了知したと認められる場合には、解約申入れの意思表示としての効力を有する。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)は、賃借人(上告人)に対し内容証明郵便で家屋明渡を催告したが、賃借人がこれに応じなかった。そのため、賃貸人は裁判所に対し家屋明…