借家法1条の二
判旨
建物賃貸借の解約申入れにおける正当事由の存否は、諸般の事実関係を総合的に考慮して判断されるべきであり、また造作買取請求権の対象となる「造作」に該当するか否かは、当該目的物の性質や取引の実態に基づき個別に判断される。
問題の所在(論点)
1. 建物賃貸借の解約申入れについて、正当事由が認められるか。2. 建物に付随する特定の目的物が、造作買取請求権の対象となる「造作」に該当するか。
規範
旧借家法1条の2(現借地借家法28条参照)にいう「正当の事由」の有無は、賃貸人・賃借人双方の建物の使用を必要とする事情のほか、賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、立退料の提供等を総合考慮して判断する。また、建物に付加された物が「造作」にあたるかは、建物に付加された物で、賃借人の所有に属し、かつ建物の使用に客観的便益を与えるものであるかを基準に判断される。
重要事実
賃貸人(被上告人)が賃借人(上告人)に対し、昭和25年3月27日に建物賃貸借契約の解約申入れを行った。これに対し、賃借人側は正当事由の欠如を主張するとともに、特定の売買取引の目的物(乙第16号証)が「造作」に該当することを前提とした主張(造作買取請求権の行使等)を行ったと考えられるが、原審は正当事由を認め、かつ当該目的物は造作ではないと認定した。
あてはめ
1. 正当事由について:原審が認定した事実関係に基づけば、賃貸人側の解約申入れには正当な理由があると認められる。上告人はこれに抵触する事実を主張するが、原審の事実認定および法律判断を覆すに足りない。2. 造作の該当性について:問題となった売買取引の目的物(乙第16号証)については、その性質や取引の態様に照らし、建物の客観的便益を高める「造作」には該当しないとした原審の判断は相当である。
結論
本件解約申入れには正当事由が認められ、また対象物は造作に該当しない。したがって、解約は有効であり、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、正当事由の判断および造作の該当性判断が、基本的には事実認定の問題であることを示している。司法試験においては、本判決自体を引用する場面は少ないが、借地借家法28条の正当事由の考慮要素や、同法33条の造作の定義(建物から独立しており、かつ客観的便益を与えるもの)を論じる際の、あてはめの検討の裏付けとして意識すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)1186 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解約申入れにおける「正当の事由」の存否は、賃貸人及び賃借人双方の建物の使用を必要とする事情等を総合的に考慮して判断される。本件では、賃貸人側の事情が優先され、解約申入れに正当事由があると認められた。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)が、上告人(賃借人)に対し、本件建物の賃貸借契約の…