滞納家賃が三箇月分以上に達したときは、賃貸人は賃借人に対し、催告等の手続を経ることなく、直ちに賃貸借契約を解除することができる旨の特約は、借家法第六条の特約には当らない。
借家法第六条の特約に当らないとされた事例
借家法6条
判旨
賃借人の賃料支払義務違反を理由とする更新拒絶に関する特約は、旧借家法6条が禁じる借地権者等に不利な特約には該当せず、有効である。
問題の所在(論点)
賃借人の賃料支払義務違反を理由とする契約終了に関する特約が、借家法6条(現行借地借家法30条等に対応)に抵触し、強行法規違反として無効となるか。
規範
旧借家法6条(現行借地借家法30条等に相当)にいう「前七条ノ規定ニ反スル特約」とは、賃借人に不利な内容の特約を指すが、賃借人の債務不履行(賃料支払義務違反)を理由とする契約の帰趨に関する特約は、正当事由の判断基準を定めた同法規則の強行法規性に抵触しない。
重要事実
賃貸人と賃借人との間で、賃借人が賃料支払義務を怠った場合を想定した、更新拒絶や解約に関する特約(所論特約)が締結されていた。賃貸人は賃借人の賃料不払いを理由に当該特約の効力を主張したが、賃借人側は、かかる特約が更新拒絶に正当事由を必要とする借家法の規定に反し、賃借人に不利な特約として無効であると主張して争った。
あてはめ
本件における特約は、賃借人の賃料支払義務違反という債務不履行を前提とするものである。借家法が正当事由等の規定をもって保護しようとしているのは、誠実な賃借人の居住権や営業権であり、義務違反を犯した賃借人に対する制裁的帰結を定めた特約までもが「賃借人に不利な特約」として禁止されるわけではない。したがって、賃料支払義務違反を理由とする本件特約は、同法6条の禁止する範囲外の合意として有効と解される。
結論
本件特約は借家法6条に反する特約には当たらないため、有効である。
実務上の射程
債務不履行による解除権や更新拒絶の要件を合意する特約の有効性を基礎付ける。ただし、現代の法理(信頼関係破壊の法理)の下では、特約があっても直ちに無催告解除等が認められるわけではなく、本判決の趣旨はあくまで「強行法規違反による絶対的無効」を否定した点に留まることに留意が必要である。
事件番号: 昭和30(オ)467 / 裁判年月日: 昭和31年10月9日 / 結論: 棄却
賃借人をして一定の期限に賃借家屋の明渡を約せしめた場合であつても、賃貸借の期限付合意解約と認められるときは、右約定をもつて借家法第六条にいう賃借人に不利な特約にあたるものとはいえない。