賃借人をして一定の期限に賃借家屋の明渡を約せしめた場合であつても、賃貸借の期限付合意解約と認められるときは、右約定をもつて借家法第六条にいう賃借人に不利な特約にあたるものとはいえない。
家屋賃貸借の期限付合意解約と借家法第六条
借家法6条
判旨
既存の建物賃貸借契約について、一定の期限を設定して合意解約を予約することは、他に不当とする事情がない限り、借家法(当時)の強行規定に抵触する「賃借人に不利益な条件」には当たらない。
問題の所在(論点)
既存の賃貸借契約を一定の期限の到来により終了させる期限付合意解約が、借家法上の強行規定(賃借人に不利益な特約の禁止)に抵触し、無効となるか。
規範
建物賃貸借において、存続中の契約に対し一定の期限を設定し、その到来をもって解約する旨の期限付合意解約をすることは、特段の不当な事情が認められない限り、借家法(旧法)の趣旨に反する賃借人に不利益な条件の設定とはいえず、有効である。
重要事実
賃貸人と賃借人との間で、従来存続していた家屋の賃貸借契約について、将来の一定の期限を定め、その期限の到来により契約を解約するという合意(期限付合意解約)がなされた。賃借人側は、この合意が借家法1条の2(正当事由等)や2条(期間の定め)の規定を潜脱する脱法行為であり、賃借人に不利な契約として無効であると主張して争った。
あてはめ
本件における期限の設定は、既存の契約関係を前提に当事者が合意したものであり、直ちに賃借人に不当な不利益を課すものとは断定できない。本件では、当該期限の設定を不当とするような具体的な事情を認めるに足りる証拠も存在しない。したがって、私法上の合意解約としての効力が認められ、期限の到来によって賃貸借契約は終了したと評価される。
結論
期限付合意解約は有効であり、期限の到来によって賃貸借契約は終了する。
実務上の射程
借地借家法下においても、合意解約そのものは自由であり、本判決の法理は維持されている。ただし、更新拒絶の正当事由制度を潜脱する目的で、契約締結時や更新時にあらかじめ解約合意を強要するような「不当な事情」がある場合には、公序良俗違反や法脱法として無効とされる余地があることに留意が必要である。
事件番号: 昭和36(オ)167 / 裁判年月日: 昭和37年4月5日 / 結論: 棄却
滞納家賃が三箇月分以上に達したときは、賃貸人は賃借人に対し、催告等の手続を経ることなく、直ちに賃貸借契約を解除することができる旨の特約は、借家法第六条の特約には当らない。