判旨
賃貸人の都合のみで明渡時期が決まる特約は賃借人に不利なものとして無効であり、正当事由の判断においては、解約申入時の事情を基礎としてその有無を決すべきである。
問題の所在(論点)
①賃貸人側の事情のみで決まる明渡時期の特約は有効か。②解約申入れの正当事由の判断において、当該特約や申入後の事実をどの程度考慮すべきか。
規範
建物の賃貸借において、明渡について賃貸人側の事情に基づく条件や不確定期限を付す特約は、借家法6条(現行借地借家法30条)の「賃借人に不利なもの」に該当し無効である。また、解約申入れの「正当の事由」は、原則として解約申入当時の事情に基づき判断される。
重要事実
賃貸人(上告人)が賃借人に対し、家屋の明渡に関し賃貸人側の事情に基づく条件または不確定期限を付す特約が存在すると主張し、当該特約の存在等を正当事由の一事情として借家法1条の2(現行法28条)に基づく解約申入れ及び明渡を求めた事案。
あてはめ
①本件特約は、条件成就や期限到来が専ら賃貸人側の事情に基づくものであり、賃借人の地位を著しく不安定にする。したがって、借家法6条により無効(なさざりしものとみなされる)である。②正当事由の存否は解約申入時の事情により決せられるべきであり、無効な特約や申入後の事後的事実を斟酌しなかった原審の判断に違法はない。
結論
本件特約は無効であり、解約申入時の事情のみでは正当事由があるとは認められないため、明渡請求は認められない。
実務上の射程
借地借家法の強行規定性(法30条)を具体化する判例。賃借人に一方的な負担を強いる明渡特約を排除するとともに、正当事由の判断基準時(解約申入時)を示しており、実務上の正当事由具備の判断において基礎となる。
事件番号: 昭和28(オ)1309 / 裁判年月日: 昭和30年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借家法(当時)1条の2にいう「正当の事由」とは、賃貸借当事者双方の利害関係その他諸般の事情を考慮し、社会通念に照らし妥当と認めるべき理由をいう。 第1 事案の概要:賃貸人が借家法1条の2(現行借地借家法28条相当)に基づき、建物賃貸借契約の解約を申し入れた。原審は、賃貸借当事者双方の利害その他一切…